（中編）“歌ってみた”で大ブレイクのネ申ボカロ曲の実写化を“見てみた”『脳漿炸裂ガール』

#元ネタ比較 2015.07.25

（…前編より続く）

映画原作のノベライズは原曲と打って変わって学園アクション

ニコニコ動画にアップされるや瞬く間にブレイクし、関連動画の総再生回数が4000万回を超えるボカロ曲「脳漿炸裂ガール」。ボカロの代名詞と言える初音ミクとGUMIことMegpoidの音源を使用したアップテンポでボカロ特有の早口のこの楽曲は、10代のカラオケ・ランキングでは常時上位ランクインを果たす定番曲だ。そんな“ネ申”曲がなんとボカロ史上初めて実写映画化された。

・【元ネタ比較】（前編）“歌ってみた”で大ブレイクのネ申ボカロ曲の実写化を“見てみた”『脳漿炸裂ガール』

ボカロの曲を映画化？しかも、歌詞は女子高生の日常や、現代社会をシニカルな視点で捉えたような、深い意味があるような、実は意味がないような、とらえどころのない内容だ。

楽曲の動画に流れるイラストは白黒を基調としたシルエットやイメージ画像で構成されている。きっと、つかみどころがなく、そのくせやたらと危うい雰囲気はプンプンと香る世界観が若い世代を魅了してるのだろう。

しかしながら、この曲を映画化すると、いったいどんな内容に・・・？さらにオリジナル楽曲の使用音源は“ネ申”ボカロである初音ミクと、同じく人気の高いGUMIだ。実写化となると相当な物議を醸すはず・・・と思うところだが、この楽曲自体は映画版の原案にとどまり、楽曲をノベライズしたライトノベルが映画版の原作となっている。楽曲→ラノベ→映画という図式となっており、このライトノベルは楽曲の歌詞から“携帯”や“マカロン”といったJKカルチャーを象徴するキーワードをすくい取って、かなり大幅にアレンジを効かせた学園サスペンス・アクションとなっているのだ。

物語性は薄い歌詞からの映画化は困難だが、このノベライズはTVアニメシリーズ『TIGER & BUNNY』の共同脚本でもある吉田恵里香が手がけ、ストーリー性が高く、現に8月には第6巻が発売されるほどの長編。若い世代を中心にベストセラーとなり、映画版は第1巻「脳漿炸裂ガール」と第2巻「脳漿炸裂ガールどうでもいいけど、マカロン食べたい」に基づき、映画版の脚本も吉田恵里香が手がけている。

このラノベ版には青緑色のツインテールにときどき長ネギを振り回すミクも、緑色の髪にゴーグルをつけたGUMIも出てきはしない。舞台は“聖アルテミス女学院”といういかにもラノベに出てきそうな名を冠したお嬢様高校。主人公は庶民で見た目も学力も冴えない平凡な女の子で、夢見た高校生活と現実とのギャップにやさぐれ気味な市位ハナだ。そして、彼女にとっては高嶺の花であるクラスメイトであり、美貌も学力も優秀な超絶お嬢様の稲沢はながメインキャラクターとして登場する。ハナはイケメン担任が豹変して突然仕掛けてきたデスゲームに、はなやクラスメイトたちと強制的に参加させられることになるのだ。

ノベライズでハナたちは檻に監禁されてデスゲームがスタートするが、これは「脳漿〜」も収録された、れるりりプロデュースによるアルバム名「地獄型人間動物園」や、「一触即発☆禅ガール」といった「脳漿〜」の関連楽曲の動画に檻の画像が登場するイメージからくるものだろう。映画版もストーリー的には小説版にほぼ即して描かれていく。（後編へ続く…）（文：入江奈々／ライター）

・【元ネタ比較】（後編）“歌ってみた”で大ブレイクのネ申ボカロ曲の実写化を“見てみた”『脳漿炸裂ガール』

『脳漿炸裂ガール』は7月25日より全国公開される。

#元ネタ比較