小学生女子を中心に絶大な人気を誇るデータカードダス&アニメ『アイカツ!』の、昨年12月に続く劇場版第2弾『アイカツ! ミュージックアワード みんなで賞をもらっちゃいまSHOW!』が、今週末から公開される。“『アイカツ!』史上初のオールスター授賞式”という設定で、これまでアニメに使われたオープニング・テーマやエンディング・テーマ、ステージ曲など約20曲が詰め込まれた50分。当サイトをご覧の方の中にも、年頃の娘さんを連れて劇場へ足を運ぶという親御さんがけっこういるんじゃないだろうか。
・[動画]『アイカツ!ミュージックアワード みんなで賞をもらっちゃいまSHOW!』予告編
基本的にこの映画はグラミー賞とか日本レコード大賞の授賞式のような、生放送の歌番組という体裁をとっている。会場は「アイカツ!武道館」で、大空あかり、氷上スミレ、新条ひなきの3人が司会進行&プレゼンター役。“あの子”が「アイカツ!マラソン」として番組中にゴールの武道館に向けてマラソンをしたり、“あの3人組”がスペシャル・ゲストとして歌とトークを披露したり、“あの先生”が「天の声」としてところどころに出てきたりと、いろいろ演出的な工夫が凝らされているが、もちろん映画の中心になっているのはライヴ・シーンだ。アニメの1st〜3rdシーズンまでに使われた人気楽曲が、新しいヴィジュアルで次々と披露される。
ネタバレになってしまうので、ここでは選ばれた楽曲や歌い手について細かくは触れないが、通して聴いてみて改めて感じるのは、このシリーズ(と言うより昨今のアニソン全般)の音楽性の過剰なまでの濃密さだ。大半の楽曲を手がけているのは、石濱翔や田中秀和、帆足圭吾らを擁する音楽クリエイター集団「MONACA」。EDMからスカの2ビート、アルゼンチン・タンゴまで、普通に考えれば同居が難しいようなジャンルが1曲の中でゴッタ煮になり、ガラパゴス的な進化を続けるJ-POPの究極形とも呼べそうな音楽を聴かせる。まことしやかに“アニソン万能説”を唱える声が増えているのも納得してしまうような、それはもう圧倒的な密度だ。
もちろん“ガラパゴス的”という言葉は、良い意味合いだけで使っているのではない。オトナのために作られたものではないことを承知の上で一音楽リスナーとして聴くと、ユニゾン一辺倒のヴォーカル、足し算的に隙間を埋めていくアレンジ、音圧を高めるためにコンプレッションされたサウンドなどを飽き足りなく感じたりはする。
しかし、それらはあくまでもただの小言だ。そんなことは関係なく、小学生の女の子たちはこの映画に夢中になるに違いない。楽曲のメロディそのものの持つキャッチーさや、細かいところまで描き込まれた各キャラクターの衣装、思わず一緒に踊りたくなる振り付けといった視覚的インパクトがそれらを十二分に補っているから。
アイドルを“点”でなく“面”で見る時代になってしばらく経つが、そのどちらの見方も楽しめてしまう「アイカツ!」が、小学生女子にとって一番の“アイドルのお手本”になっている理由がよく分かる。本作はそんな仕上がりだ。(文:伊藤隆剛/ライター)
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