沢田研二主演、松たか子共演の中江裕司監督最新作『土を喰らう十二ヵ月』。本作は、1978年に作家・水上勉が記した料理エッセイから紡ぎ出す、人々がいつしか忘れてしまった土の匂いのする生活を思い起こさせ、人としての豊かな生き方を教えてくれる物語だ。
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中江裕司監督、松たか子を「素晴らしかったですね」と絶賛
主演の作家ツトム役の沢田は、物語を凌駕する圧倒的な存在感をみせ、ヒロインの年の離れた恋人・真知子役には松たか子。その他、火野正平、檀ふみ、西田尚美、尾美としのりら実力派俳優が脇を固め、演劇界の重鎮・奈良岡朋子も出演。さらに、料理研究家の土井善晴が映画初参加することでも話題を呼んでいる。
今回、ツトムと真知子のふたりが晩酌するシーンの本編映像が解禁され、その見所を紹介。
作家のツトムは人里離れた信州の山荘で、犬のさんしょ、13年前に亡くなった妻の遺骨と共に暮らしている。畑で育てた野菜や山菜を収穫し幼少期に禅寺で習った精進料理を作る日々。食いしんぼうの担当編集者で恋人である真知子が東京からやってきた。
日が暮れて、皮を少し残して囲炉裏であぶった小芋で晩酌。静かであたたかな時間を過ごしていたが、突如、真知子の一言で、ふたりは恋人同士から、作家と編集者へと様変わりをする。
「原稿は?」「…ない」「もう締め切りよ」ツトムは頬杖をつき、「子芋さんで許してくれないかな」と甘えた素振りをして見せるが、真知子は、おもむろに立ち上がり原稿用紙を手に取る。きっちり仕事をする真知子を目の前に、逃げ場がなく観念したツトムは思いを巡らせ万年筆を手に取ると…。
松が演じる真知子のキャラクターは、原案にはなく、脚本も手掛けた中江監督によるオリジナルキャラクターだ。中江監督は原案エッセイのあとがきの「ミセス編集局の女子連に、ひそやかな悦しみをのぞかれ、かくも、よしあしごとを書く始末になった。嗚呼」という一文を読んで真知子を作りだした。
「水上さんの(他の)小説をもう一度読み直して、そこに出てくる女性たちを通じて真知子像を作り上げていきました」。「(松さんは)素晴らしかったですね、沢田さんはそこにいるだけで役を成立させる役者さんですが、松さんはそういう沢田さんを細かくサポートしてシーンを作り上げてくれた。ただ脇を固めるだけでなく、瞬時に松さんが場の中心になることもある。その切り替えが見事なんです」と振り返る。
締め切り原稿の催促は、作家と編集者間でよく繰り広げられるやりとりであると想像に難くないが、穏やかな時間が流れる中、暮らす場所も年齢も離れた、一筋縄ではいかない作家ツトムと編集者・真知子の関係や多くは語らずも匂い立つ男女の機微を感じる印象的なシーンとなっている。
『土を喰らう十二ヵ月』は11月11日より全国公開。
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