11月26日は「ペンの日」。1965年のこの日に、島崎藤村が初代会長の一般社団法人・日本ペンクラブが創立されたことに由来する。日本ペンクラブの「PEN」は、文房具のペンを象徴するとともに、Pが詩人や劇作家、Eが随筆家や編集者、Nが小説家を意味しており、文学を通じた表現の自由を擁護するために設立された団体とのこと。今回はペンの日にちなみ、筆記具が物語のキーアイテムとなっている作品をご紹介する。
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無重力でも書けるペン!? ボリウッドの大ヒット作『きっと、うまくいく』
最初にご紹介するのは、スピルバーグが絶賛して3度見たことで知られ、ブラッド・ピットも「心が震えた」という賛辞を送ったインド映画『きっと、うまく行く』である。ニューデリーの名門工科大学に通う3人の若者を中心とした青春映画で、学生時代の回想シーンと、仲間内で現在行方不明になっているランチョーの行方を追うミステリーが同時進行していく。
ランチョーらが通っていた大学は、世間では一目置かれる名門校だが、内情は独裁的な学長や理不尽な上級生が支配する封建的な世界で、成績や点数といった数字のみが重視される教育が行われていた。そんな校風の中、「きっとうまくいく」という意味の合言葉「Arl Izz Well(アーリズウェル)」が口癖の超楽天家ランチョーは良い意味で異彩を放っており、意地悪な要求を突き付けてくる学長や上級生をまんまと出し抜くキレ者だ。その姿は痛快で胸をすく。「Arl Izz Well」は、ランチョーが自分を鼓舞するときや仲間を勇気づける際に頻繁に登場し、次第に見る側もその言葉を聞くと元気になってくる。
この作品でキーになるのは、学長が所有する無重力状態でも書ける特殊なボールペン。学長が、恩師から「特別優秀な生徒にあげてくれ」と譲り受けたものである。そのボールペンがある人物の手に渡るシーンでは、多くの人が胸を熱くするのではないかと思う。人間は弱い。親の顔色が気になって言いたいことが言い出せない、自信のなさや不安からついお守りや神頼みなど何かにすがってしまう、そんな弱さゆえの「人間あるある」と向き合いながら、自分の夢に向かって突き進んでいく若者たちの姿が胸を打つ作品だ。
万年筆の銘品“マイスターシュテック”で…不朽の名作『太陽がいっぱい』
次にご紹介するのは、ヨーロッパのクラシカルムービーの名作『太陽がいっぱい』である。当時イケメンの代名詞であったアラン・ドロン演じる貧しい美貌の青年が犯罪に手を染めるミステリーで、作品と同名のテーマ音楽も有名だ。
この作品に登場するペンは、万年筆である。万年筆はなかなかマニアックな筆記具で、こだわりだすとかなり奥の深いアイテムだ。特に男性に熱狂的なファンが多く、本作に登場するモンブラン社のマイスターシュテックは、“いつかは持ちたい万年筆”の筆頭に上がる憧れの逸品的モデルだ。貧しい青年がなんでそんな高級な万年筆を持ってるんだ!? という突込みはナシしとして、ドロンは自身の完全犯罪をもくろむための偽装工作の練習(?)にこの万年筆を使用している。今見るとかなりアナログな手法での練習風景はインパクト。時代の流れを感じさせて面白い。貧しいことで虐げられてきた青年が、罪を犯すことでブルジョワ階級の美女や幸せを手に入れようと企んだ計画は果たして成功するのか? ラストシーンが見ものだ。(T)
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