“動”と“静”を表現したポスタービジュアル
第72回ベルリン国際映画祭ほか21の映画祭に出品され、世界が熱視線を送る三宅唱監督の最新作『ケイコ 目を澄ませて』が12月16日より公開される。本作は、聴覚障害と向き合いながら実際にプロボクサーとしてリングに立った小笠原恵子さんをモデルに、彼女の生き方に着想を得て、『きみの鳥はうたえる』(18年)の三宅唱が新たに生み出した物語だ。
・岸井ゆきの、愛想笑いが嫌いな女性に。聴覚障害のボクサー役で新境地
今回解禁となったアザービジュアル6種は、リングサイドに座り、内なる情熱を感じさせる眼差しを向けた従来のポスタービジュアルよりも、さらに主人公ケイコ(岸井ゆきの)の様々な表情を切り取り、彼女の心の揺れ、不安や迷い、喜びや情熱といったたくさんの感情を想起させるものが並ぶ。なかでも、目の上から血を流しリングの上での激戦の熱量そのままに闘志むき出しの鋭い視線をむけるビジュアルと、リングを降りた日常の中で物思いにふけるように一点を見つめる儚げな横顔をおさえたビジュアルの2点は、まさに動と静を体現したような、別人級のギャップを感じさせる。同じケイコというひとりの女性をこれだけの振り幅を持って演じる岸井の凄みに圧倒される。
ビジュアル内には、著名人からのコメントを一部抜粋したものと、「ケイコ、29歳。耳が聞こえないプロボクサー。ゴングの音もセコンドの指示もレフリーの声も聞こえない中、不安や迷い、喜びや情熱を抱き、前を向く――」というコピーが躍る。
愛想笑いが嫌いで噓のつけないケイコは、決して器用ではない。聴覚障害と向き合いながらプロボクサーとしてリングに立つ彼女に、母親は「いつまで続けるつもりなの?」と迫る。言葉に出来ない想いが募り、休みをもらいたいとしたためた手紙を会長に渡せずにいたある日、ジムの閉鎖を知ることになる――。
痛いのは嫌い、でもボクシングは好き。逃げ出したい、でも諦めたくない。矛盾した気持ちを抱え、自分の中でたくさんの想いに折り合いをつけながら揺れ動くケイコの姿には、誰しもが自分を投影できるのではないだろうか。だからこそ、それでも一歩ずつ歩みを続ける彼女の美しい姿に目が離せない。
『ケイコ 目を澄ませて』は、12月16日より公開。
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