若者取り巻く過酷な現状、社会のほうがおかしくなっているのでは?
【日本映画界の問題点を探る/番外編/AV新法に込めた思い 3】AV出演被害防止・救済法(※)の成立に奔走した立憲民主党の塩村あやか参議院議員。2022年6月23日に施行されて以降、様々な議論を呼んでいる本法について塩村議員に聞いた。3回目となる今回の記事では、タレント活動をしていた頃の体験を振り返りつつ、若者を取り巻く過酷な状況について語った。
参議院議員としての任期も残り3年となり、折り返し地点へと入った塩村。2013年の東京都議会議員選挙に当選したのをきっかけに政治の世界へと入ることとなったが、過去にはグラビアアイドルやタレントとして活動をしていた時期がある。そして、そのときの経験も塩村をAV出演被害防止・救済法の成立に駆り立てた要因の一つだという。
・【日本映画界の問題点を探る/番外編/AV新法に込めた思い】塩村あやか参議院議員に聞いた(全4回)
・現役時代には気づかなかったAV出演のリスク、元クイーン女優が今だから言えること
※正式名称=性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律
「私は事務所に恵まれていたのですごく守られていましたが、別の事務所に所属していた子たちの話を聞くとそうではないことがたくさんありました。『もう芸能界の仕事は辞める』と言った子のなかには、売れていないという理由で(意に沿わず)脱がされるような仕事をさせられたり、事務所に行ったらいきなりアダルトビデオの撮影が始まってしまったりしたこともあったと聞きます。私もほかの事務所を知るためにスカウトについていき偵察をしたことが、実は10代の頃にあります。『どこまでできるの?』という話から、どんどんアダルトなニュアンスの質問をされたこともあったほどです。そんなふうに女の子たちが大切にされていない様子を見て、疑問に感じることはたくさんありました。いまのAV業界で被害に遭っている人たちを見たときに、そのときの感情がシンクロしたことも、放っておいていいことではないと考えるきっかけになったと思います」
芸能活動として並行して短大に通っていた塩村だが、決して楽な生活ではなかったと振り返る。
「私は親からの仕送りもなく奨学金で通っていたので、4年制に通うのは難しいと考えて短大にしました。そのあとは非正規雇用で働いていたので、当時は奨学金を返済するのもかなり厳しかったですね。30歳を過ぎた頃に完済しましたが、本当に苦しかっただけに、あのときの達成感はすごかったというか、自分が2倍強くなった気がしました」
そういう思いを味わってきたからこそ、いまの学生たちが置かれている状況に対しても親身に耳を傾けずにはいられない。
「コロナ禍になって、私が最初に取り上げたのは、パソコンやスマホを通してライブチャットを行うチャットレディをしている大学生からの悲鳴。彼女がその仕事をしているのは、遊ぶお金欲しさではなく、学費や生活費を稼ぎたいというところから始まっています。コンビニでのバイトだけでは足りなくて、夜はラウンジでも働いていたそうですが、それもコロナ禍が原因で閉店。そこからアダルト行為を含むチャットレディをやらざるを得なくなったと泣きながら話してくれました。人によっては、風俗や個人で製作される同人AVに行く人もいるようですが、若い人が搾取され、しかも決して見合う報酬や対価といえない悪循環に陥っているのが現状です。それでも彼女たちにとっては大きなお金。学生の半数以上が奨学金を借りている現実からもわかるように、社会のほうがおかしくなっているんだと思います」
経済的な理由からAV業界に足を踏み入れる人が多いようだが、高額な報酬をもらえているのは一握りのトップ女優だけ。相当数の女性が毎年業界に入っていくものの、厳しい現実を目の当たりにすることで、ほとんどが1年も経たずに辞めてしまうという。そのなかで被害に遭ってしまった人に対して、塩村はこう訴える。
「まずは、『相談してください』のひと言に尽きます。特に、今回の法律ができたことによって専門官を設けるようになり、画期的な取り組みが始まったところなので、何かしらの解決策が必ずあるはずです。各都道府県にあるホットラインや相談所に電話をしてみるのでも、NPO法人ぱっぷすのような性被害の相談支援を行う団体に連絡してみるのでもいいので、まずは相談することから始めるのが一番だと思います。親身になって一緒に戦ってくれますし、きっと寄り添ってくれるはずです。最初は「バレないから大丈夫だ」と思っていても、後から嫌だと感じることもあるので、そうなったときに自分の人生をしっかりと守っていただきたいと思います」【4「性暴力被害においては、たとえ一件でも多すぎる」党派を超えた思いが結実(2022年12月4日掲載予定)】に続く(text:志村昌美/photo:今井裕治)
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