フリーランスの多いエンタメ業界、多様性ある働き方推進するなら脆弱な社会保障を見直す必要

#MeToo#塩村あやか#日本映画界の問題点を探る#日本映画界の問題点を探る/番外編/AV新法に込めた思い

塩村あやか
塩村あやか
塩村あやか

弱者は叩いてもいい? 同じ発信でも男性議員なら攻撃されない不思議も

【日本映画界の問題点を探る/番外編/AV新法に込めた思い 4】AV出演被害防止・救済法(※)の成立に奔走した立憲民主党の塩村あやか参議院議員。2022年6月23日に施行されて以降、様々な議論を呼んでいる本法について塩村議員に聞いた。タレント、放送作家を経て政治家となった塩村議員。最終回となる今回は、フリーランスが多い日本のエンターテインメント業界が抱える問題点、日々感じる男女格差などについて語った。

学生時代から続けていた芸能活動から離れたのち、放送作家となった塩村。『シューイチ』や『24時間テレビ』といった人気番組を担当することになる。それだけに、“古巣”であるエンタメ業界の行く末には案じるところがあると話す。

【日本映画界の問題点を探る/番外編/AV新法に込めた思い】塩村あやか参議院議員に聞いた(全4回)

億単位を売り上げたAV作品の出演料はたった30万円、そのうえ被害者となってしまった過去も

※正式名称=性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律

「放送作家時代から同期のような間柄で親しくしている友人がおり、現在はテレビ局でドラマを手掛けていますが、彼から最近の事情について話を聞く機会がありました。そのときに、いま話題になっている韓国のエンタメに関しては、『どれだけお金を掛けずに作るかが日本。韓国とは掛けているお金がまったく違うし、あれだけお金が掛かってていれば、当然のことながら質もまったく違う。韓国にはかなわない』と。それはこの前視察で韓国に行ったときに、私も同じようなことを感じました。そのいい例が、飛行機のなかで流れる機内安全ビデオ。K-POPアイドルを採用し、エンタメ度の高い映像に仕上げていたので、これにはほかの国会議員からも『国策を感じるね』という感想が出たほど。そういうところをとってみても、日本は負けているように思いました」

2013年に設立され累積損失が膨らんでいる“クールジャパン機構”の経過を見ても分かるように、日本は芸術に対しての理解と支援が遅れている国と言えるだろう。そして、塩村はエンタメ業界が発展しない原因の一つに、社会保障の不十分さを挙げる。

「私は日本が失敗していると感じるのは、社会保障の大切さを忘れていたと思うこと。非正規雇用が増えていますが、自由で多様性のある働き方を推進するのなら、国は脆弱な社会保障をしっかりと見直さなければいけないと思っています。さらに問題なのは、政府が税金を悪者のようにしてしまう政治をしていること。コロナ禍の持続化給付金の多重下請け構造に代表されるような、税金の中抜きのようなことばかりしていると、誰でも税金を払うのが嫌になりますよね。いまのままでは経済もうまく回らないので、悪循環を断ち切るためにも、大多数の人たちが安心して暮らしていけるための社会保障が必要だと思っています。特に、エンタメ業界はフリーランスの方が多いので、そこを改善すべきではないかな、と。私自身も放送作家のときは非正規雇用で、一生懸命働き続けないとその日が暮らせないような状況で、とても子どもを産む余裕はありませんでした。出産一時金をもらったくらいではまったく足りないですよね。なので、フリーランスの方々でも安心して子どもを持つことができるような仕組み作りは今後重要だと感じているところです」

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女性の活躍は進んでいるものの、あらゆる業界においてまだまだ男女差別があることは否めない。

「私の場合、野党で女性議員ということで下に見られているところがあるのかもしれませんが、正直言って男女の壁を感じることは多くあります。たとえば、今回のAV出演被害防止・救済法に関しても、Twitterで私がツイートすると攻撃の対象としてさらされますが、同じ内容について男性議員が私よりきつく書いても炎上するようなことは一切ありませんでした。まだまだ弱いほうを叩いてもいいという風潮があるんだと思います。また、私が見てきた女性たちのなかには、すべてを両立している“スーパーウーマン”もいますが、一方で家庭や子どもを持つことを諦めて出世を選んできたような方がいるのも事実。その姿を見て、果たしてこれでいいのだろうかという気持ちにはなります」

そして最後に、エンタメ業界で働く女性たちに向けて伝えておきたいことがあると訴える。

「私自身は上手く切り抜けることができるタイプだったので、危ない目に遭ったことはありませんでしたが、そもそも危険なことが起こりうるような業界のままではよくないと思うので、みんなで力を合わせて変えていけたらと思います。一人では難しいと感じるかもしれませんが、小さなパワーも束になれば大きな力になります。いまは、MeToo運動などで流れは出来てきているところなので、傍観するのではなく、ぜひその一員になっていただきたいです」(text:志村昌美/photo:今井裕治)

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