●100歳超のオリヴェイラ監督を筆頭に
70代、80代監督が傑作を続々!
老いてますます盛ん、という表現があるが、身を以てそれを表現していたのが今年4月、106歳で亡くなったポルトガルのマノエル・ド・オリヴェイラ監督だろう。今年も短編ドキュメンタリーを発表し、まさに生涯現役だった彼が2010年に監督した『アンジェリカの微笑み』は、ちょうど先週末から日本公開したばかりだ。
カメラが趣味の青年が、若くして亡くなった美しい女性・アンジェリカの亡骸にレンズを向けると、白装束の彼女が突然まぶたを開いて微笑みかける。その笑顔の虜になり、死者に恋した青年のもとへアンジェリカが訪れる。幽霊との恋物語は『雨月物語』や日本の怪談でもなじみ深いが、南欧らしい明るいエロス、人を食ったようなユーモア・センスはいかにもオリヴェイラらしい。100年以上生きてなお、みずみずしい感覚に驚嘆させられる。
100歳以上というのは前人未到の域だが、今や70代、80代で現役の監督はめずらしいとは言えないどころか、巨匠・名匠と呼ばれる監督たちはこの世代にこそ集中していると言うべきだろう。
12月19日に13年ぶりの新作『マイ・ファニー・レディー』が公開になるピーター・ボグダノヴィッチは今年76歳。ハリウッド・スターになった若手女優が語る自らのシンデレラ物語は、めまぐるしい展開と複雑な人間関係を軽やかなユーモアで包んで、上映時間93分にまとめたロマンティック・コメディ。名作の数々や映画・舞台業界への目配せを随所にちりばめ、スピーディな語り口ながら、慌ただしくならないこの手腕、まさに年の功だ。
寡作なボグダノヴィッチに対して、80歳になる今もコンスタントに年1本は撮り続けているのはウディ・アレンだ。長らく地元ニューヨークにこだわった映画作りをしてきたが、2005年の『マッチポイント』を機に国外へ飛び出し、70代はバルセロナやパリ、ローマとヨーロッパを舞台に軽めのコメディを連発。再びアメリカに戻って撮った『ブルー・ジャスミン』(13年)では虚栄の空しさを鋭く突いてみせた。アレンはお気に入りの女優を見つけると、ヒロインに起用し続けるのだが、現在のブームはエマ・ストーン。『マジック・イン・ムーンライト』(14年)に続いて最新作『イラショナル・マン』でも彼女がヒロイン役。いくつになっても女優にときめく心は、間違いなく彼の原動力だ。(後編へ続く…)
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