(…前編より続く)
2016年も元ネタを持つ映画作品がひしめき合っている。その中から悩みに悩んで厳選した期待作10本を紹介しよう。それ以外にも映画ではないが、ドラマシリーズ化されてNetflixで配信される『火花』も注目したい。お笑い好きにはたまらなく、久々に小説で嗚咽するほど号泣させられたが、やはり又吉直樹の一切の無駄のない文章の美しさがあってこそ。陳腐な物語に陥らずに映像化できるだろうか?
・【元ネタ比較】前編/Netflix『火花』にも注目! 2016年、原作あり映画の期待作はこれだ
【第5位:『64(ロクヨン)』】
「半落ち」「クライマーズ・ハイ」など、重厚で緊張感ある人間ドラマを生み出す、元新聞記者の横山秀夫のベストセラーの映画化。時効が迫る昭和64年に起きた未解決誘拐事件の操作に関わった者を中心に、警察と新聞記者の内部事情に切り込みながら描いてゆく。2015年4月にNHKでドラマ化されたときはピエール瀧、木村佳乃、山本美月、柴田恭兵ら、バラエティでも成立しそうなキャスティングながら、渋くて深みある人間ドラマを見せてくれた。 瀬々敬久監督、佐藤浩市主演による映画版はドラマを超えられるだろうか。
【第4位:『四月は君の嘘』】
新川直司原作の人気コミックを広瀬すず、山崎賢人共演で実写化。母の死によってピアノが弾けなくなった天才ピアニストの少年が自由奔放なヴァイオリニストの少女と出会う、恋と成長を描く音楽青春ドラマ。テレビアニメシリーズでも、キモとなっているのは演奏シーンの美しさ。広瀬すずと山崎賢人も演奏の練習をしているというが、白けさせることなく見せてくれるだろうか? “家族の死による心の傷を抱える天才少年”という設定が似ている『3月のライオン』も気になる。『ハチクロ』の惨劇再来なるか?
【第3位:『セトウツミ』】
男子高校生2人が放課後の河原でただただまったりと関西弁で他愛ない無駄話を続ける。それだけの内容でありつつ、よくある日常系漫画とは一線を画す此元和津也原作の人気コミックを『まほろ駅前狂騒曲』の大森立嗣が実写化する。共演は池松壮亮と菅田将暉の若手演技派2人というナイスなキャスティング。WボケというかWツッコミというか、独特の間合いと空気の会話劇を2人がどう展開してくれるのか、今から楽しみで仕方ない。
【第2位:『アイアムアヒーロー』】
実写化のニュースが飛び込んだときには色めき立った! 原作は『ボーイズ・オン・ザ・ラン』などの花沢健吾による小学館マンガ賞受賞の傑作漫画。あるジャンル漫画なのだが……と隠さずとも有名だろうが、敢えてここでは言いたくない。単行本1巻目ではなかなかそのジャンルにたどり着かないほど日常が細部に渡って描かれ、それだけに日常の崩壊がリアルに迫る。そこを大切に描いてくれているのか見届けたい。スペインのシッチェス映画祭ではすでに2冠獲得だが、『GANTZ』の佐藤信介監督がVFXにパワーを注ぎ過ぎた結果ではないかと不安が煽られる。
【第1位:『オーバー・フェンス』】
佐藤泰志原作の『そこのみにて光輝く』で取材したときに菅原和博プロデューサーが、「これが成功したら映画化したい」と言っていた同原作者の「オーバー・フェンス」が映画化されることに! これは嬉しい、ぜひ見たい! 原作者が小説を諦めかけたときに通った経験をベースにしたという、職業訓練校での野球試合を描いている。キャストはオダギリジョー、蒼井優、松田翔太と、メジャー感あるのが逆に不安にも思うが、監督は『マイ・バック・ページ』などの山下敦弘だから悪いようにはしないはず。(文:入江奈々/ライター)
入江奈々(いりえ・なな)
1968年5月12日生まれ。兵庫県神戸市出身。都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。
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