(…日本映画編より続く)
音楽が印象的に使われる映画をジャンルにとらわれず紹介するコラム【映画を聴く】。今回は2016年1月から3月までに公開が予定されている作品の中から気になるものをいくつかピックアップ、【映画を聴く】的なツボを軽く紹介したい。より詳しい紹介は、各作品の公開時にアップする予定。
・【映画を聴く】日本映画編/2016年も注目作が目白押し、音楽が気になる近日公開映画! クドカンのあの作品は!?
●『ビューティー・インサイド』(1月22日公開)
まずは韓国映画の『ビューティー・インサイド』から。毎朝、目覚めるたびに姿も性別も国籍も変わってしまう男と、彼が一目惚れした美しい女性による風変わりなラブストーリー。インテルと東芝が合同で制作したソーシャル・フィルムを原案とした本作は、韓国CM界屈指のビジュアル・クリエイターであるペクの監督作品らしく、映像と音楽のマッチングが絶妙だ。主題歌には英国のバンド、シチズンズの「True Romance」が使用するなど、監督のセンスが隅々にまで行き届いている。日本から上野樹里が出演していることも話題だ。
●『愛しき人生のつくりかた』(1月23日公開)
フランスのベテラン歌手にして女優のアニー・コルディが主演、『仕立て屋の恋』のミシェル・ブランらが脇を固めたヒューマン・ドラマ。シャルル・トレネのシャンソン曲「残されし恋には」を、ジュリアン・ドレが現代的なアレンジで歌っている。いかにもフランス人が作った王道のフランス映画という印象ながら、物語の舞台は中盤にパリからノルマンディーへ。フランソワ・ド・ルーベやフィリップ・サルドの音楽を意識したという劇中音楽も早く聴いてみたい。
●『クーパー家の晩餐会』(2月19日公開)
『クーパー家の晩餐会』は、クリスマスの夜を舞台にしたドタバタ劇。音楽についての詳しい情報は入っていないが、『I am Sam アイ・アム・サム』でビートルズ・ソングをフィーチャーしたジェシー・ネルソン監督の作品ということで、さぞかし音楽的にも楽しい作品になるのではないかと。
●『偉大なるマルグリット』(2月公開)
かつてフランスに実在した伝説的なオンチ歌手、フローレンス・フォスター・ジェンキンズをモデルとした作品。誰が聴いても下手なのに、貴族たちは皆彼女を褒めることしかせず、本人も自分は歌が上手いと思い込んでいる。そんなウソのような本当の話をベースとしたこの作品は、本国フランスでは大ヒットしたという。主演のカトリーヌ・フロによる、トレーラーを見るだけでも分かるその下手っぷりが見事(?)で、物語の顛末が気になる。
●『マジカル・ガール』(3月12日公開)
架空の日本のアニメが出てきたり、トレーラーになぜかアイドル時代の長山洋子のデビュー曲「春はSA・RA・SA・RA」が使われていたり。とにかく謎の多い映画だが、ペドロ・アルモドバル監督のお墨付きというカルロス・ベルムト監督だから音楽的にも面白いに違いない。ベルムト監督は日本のポップ・カルチャーにかなりどっぷり浸かっているようで、『ドラゴンボール』を再解釈した物語を自分で出版するほどとか。このベルムト監督や、当コラムでも紹介した『リザとキツネと恋する死者たち』のウッイ・メーサーロシュ・カーロイ監督など、日本フリークの映画監督が世界で同時代的に現れているのが興味深い。(文:伊藤隆剛/ライター)
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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