「映画好き」と言われれば言われるほど、聞きづらくなるのが映像技術の一般常識。理解しているようでいて実はよく知らない。こっそり訊ねたら「そんなこと知らないの?」と呆れられそう。本コラムでは話題の映画ブルーレイを題材にしながら、いまさら聞けない映画の一般常識や用語についてお話していこう。
●今回のお題「配給」
●オススメBlue-ray『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』
昨年秋、「東宝東和がパラマウント・ピクチャーズと劇場配給契約を締結」というNEWSが伝えられた。2月1日から日本での劇場配給が始まり、アダム・マッケイ監督作『マネー・ショート 華麗なる大逆転』が配給第1弾となる。
さて今回取り上げるのは、意外と知られていない『配給』という用語。映画が公開されるまでには、大別して3種類の会社が必要となる。まず映画を作る製作会社。次に完成した映画を映画館に貸し出す配給会社。そして映画館を経営する興行会社である。そこには製作・配給・興行までを網羅した会社もあれば、製作作業のみ、配給機能のみの会社もある。
パッケージソフト、放映、配信と映画鑑賞も多様化する時代となったが、基本的に映画の配給とは、作品を作り手から観客へ届けるパイプライン的な仕事のことである。作品の見極めから宣伝まで、映画産業の重要なパートを担っている。外国映画を例にとれば、日本の配給会社はメジャー系とインディペンデント系の2種類が存在する。
前者では、海外本社から配給委託された作品が日本支社に送られ、興行会社と交渉して上映する。また後者は(大半が)配給専門であり、世界各国での作品買い付け、日本への売り込みの窓口も担当する。前述の東宝東和は後者に属するが、07年秋よりユニバーサル作品を手掛け、今回のパラマウントとの契約でメジャー系に並ぶ存在となったわけである。
配給に伴う用語には『フラット』『歩合興行』、そして『配給収入』がある。フラットと歩合興行は、配給会社の上映素材の貸出料の種類を指す。上映前に一定金額(基本は1週間単位)を決めてしまうのがフラット。映画館との収益割合を決め、上映終了後に興行収入から分配するのが歩合興行である。
その興行収入とは(上映期間中に)観客が支払った入場料全額を指すが、配給収入とは興行収入の歩合で得た収入だ。作品によっては歩合価格が上下するが、配給収入は興行収入の平均50〜60%が相場と憶えておこう。
さてここで気になるのは、これまでパラマウント作品配給を手掛けてきたパラマウント ジャパンの動向だ。昨年『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』を大ヒット(興行収入51億1000万円)させたが、東宝東和同様に今後の動向に注目されたい。(文:堀切日出晴/オーディオ・ビジュアル評論家、オーディオ・ビジュアル・ライター)
次回は2月12日に掲載予定です。
堀切日出晴(ほりきり・ひではる)
これまでに購入した映画ディスクの総額は軽く億を超えることから、通称は「映画番長」。映画助監督という作り手としての経歴を持ち、映画作品の本質を見抜くには、AV機器を使いこなすこと、ソフトのクォリティにも目配りすることを説く。
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