アカデミー賞作品賞にノミネートされた8本の米国での配給会社は以下のようになる。
『レヴェナント:蘇りし者』(20世紀フォックス)
『オデッセイ』(20世紀フォックス)
『ブルックリン』(フォックス・サーチライト)
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(ワーナー・ブラザース)
『スポットライト 世紀のスクープ』(ロープン・ロード・フィルムズ)
『ブリッジ・オブ・スパイ』(ディズニースタジオ)
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(パラマウント)
『ルーム』(A24)
「勝ち組映画会社」が20世紀フォックスとフォックス・サーチライトのフォックス・グループで、今年の作品賞ノミネート作は3本と最も多い。
フォックス・グループは近年のアカデミー賞で躍進を続けており、フォックス・サーチライトが、2009年『スラムドッグ$ミリオネア』、14年『それでも夜は明ける』、15年『バードマン』で作品賞に輝いている。今年は特に『オデッセイ』と『レヴェナント:蘇りし者』の配給戦略が的中した。
まず、『オデッセイ』の米国公開日は昨年の10月2日。アカデミー賞狙いの作品は12月公開が多いため、早めに公開して賞シーズンの先手を打った。2年前のSFドラマ『ゼロ・グラビティ』(ワーナー・ブラザース配給)が10月4日公開だったので、参考にしたのかもしれない。
逆に『レヴェナント』は賞レースぎりぎりの12月25日にわずか4館で公開をスタート。年明け1月8日から3375館に拡大公開して賞レースをけん引している。
「負け組映画会社」は2つ。1つはソニーグループで、ソニーピクチャーズとソニークラシックというグループ会社両方でノミネートを逃した。
もう1つはワインスタイン・カンパニー。09年以来作品賞にノミネートされてきたが、初めてノミネートを逃した。
ワインスタイン・カンパニーは、“アカデミー賞の賞取り屋” ハーヴェイ・ワインスタインが設立した会社だ。彼は1979年にミラマックスを設立して、90年から毎年のようにアカデミー作品賞にノミネート。『イングリッシュ・ペイシェント』『恋におちたシェイクスピア』『シカゴ』と3度作品賞に輝いている(『ノーカントリー』もミラマックスだが、ワインスタインが同社を去ってからの受賞)。
2005年にワインスタイン・カンパニーを設立してからも09年を皮切りに作品賞候補を出し続け、11年に『英国王のスピーチ』、12年に『アーティスト』で作品賞を受賞した。アカデミー賞を狙ったキャンペーンや配給戦略に長けていることで知られるが、神通力にかげりが出てきたようだ。『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ 繋がれざる者』と2作連続で作品賞にノミネートされたクエンティン・タランティーノ監督作は同社が配給しているが、新作『ヘイトフル・エイト』は作品賞候補を逃した。これも同社にとっては誤算だっただろう。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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