2023年に創立100周年を迎える映画会社が2つある。ウォルト・ディズニーとワーナー・ブラザースだ。両社には共通点があり、動画配信サービスに注力(ディズニーがディズニープラスなど、ワーナーがHBO Maxなど)、アメコミ映画の有力ブランドを所有(ディズニーがマーベル、ワーナーがDC)、22年にトップ交代があった。22年を振り返り、23年を展望する。
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世間を驚かせた、ボブ・アイガーのディズニー復帰
【興行トレンド】ディズニーグループの動画配信サービスの会員数を見ると、10月1日時点でディズニープラスが1億6420万人、Huluが4720万人、ESPNプラスが2430万人。合計すると2億35700万人。ネットフリックスが9月末時点で2億2309万人なので、グループ合計では上回る。
ネットフリックスは22年1月~3月期、4月~6月期に初めて会員数が減少に転じたことから低価格の「広告つきベーシックプラン」を導入。11月4日からアメリカや日本など世界12か国で開始。新プランで会員数がどのくらい増えるか、23年に明らかになる。ディズニープラスも広告つきの低価格プランをアメリカで12月8日から開始。こちらも23年が正念場となる。
ディズニーのトップ交代劇はビッグニュースとなった。11月20日、21年に引退した中興の祖、ボブ・アイガー氏を最高経営責任者(CEO)に取締役会が復帰させた。今後2年にわたって再びCEOを担い、成長戦略を定めるとともに後継者の育成を進める。20年2月からCEOを務めていたボブ・チャペック氏は即日退任した。取締役会がトップを交代させたのはディズニーの経営に危機感を抱いたからだ。1つはディズニープラス。24年の黒字化を目標に掲げるが、競争の激しい米国での成長は頭打ちしつつある。もう1つはチャペック氏の経営姿勢。彼は、ディズニーが製作した映画やテレビ番組をどんな方式で消費者に届けるのか(劇場公開、テレビ放送、動画配信)を決める部署を新設したが、たびたび製作陣や俳優などと意見の相違が生じていたという。23年、アイガー氏はどんな経営方針を打ち出すだろうか。
ワーナーCEOデビッド・ザスラフは9千万ドル大作をお蔵入りに
ワーナーに目を転じる。ハリウッドでは、トップが変われば会社の方針も大転換する。業界をざわつかせたのが、撮影が終了していた映画『バットガール』の劇場公開を中止したことだ。バットマンに登場する人気キャラクターを主人公に製作費に9000万ドルを投入した大作をお蔵入りにする決断をくだしたのはデビッド・ザスラフ氏。21年にワーナー・メディアとディスカバリーの統合が発表されたが、22年に入って本格始動。新会社ワーナー・ブラザース・ディスカバリーのCEOがザフラフ氏だ。バットマンやスーパーマンなどを擁するDCはワーナーの貴重な財産。彼は「DCが長期間成長していけるようにする。用意ができるまで、映画を公開しない」と宣言。その方針に則り、お蔵入りとなったようだ。
そして10月、DCスタジオのトップに新たにジェームズ・ガン監督とプロデューサーのピーター・サフランが就任した。DCスタジオはDCフィルムズに代わる部署として新設され、2人は同部門で製作する映画、テレビ作品、アニメーション作品を束ねる。さっそく、準備中の『ワンダーウーマン3』の企画をボツにしたり、スーパーマンへの復帰を明言していたヘンリー・カヴィルを降板させ、ガン監督が新たなスーパーマンの脚本に取り掛かっている。DCスタジオの新たな方向性は23年に見えてくるだろう。
なお9月30日時点でHBO、HBO Max、ディスカバリープラスの会員数の合計は9450万人(個別の契約者数は発表せず)。アメリカではHBO Maxとディスカバリープラスを統合した新たな動画配信サービスを23年春に開始。先行するネットフリックスやディズニープラスを追撃する。(文:相良智弘/フリーライター)
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