クリスマスイブを舞台にしたコメディタッチの群像劇『クーパー家の晩餐会』が、日本でもようやく公開されることになった。嘘や隠しごとを胸に秘めた4世代・11人(と犬1匹)の家族が年に一度の晩餐会で繰り広げるドタバタと、そこから生まれる小さな奇跡を描いた、『ラブ・アクチュアリー』や『THE 有頂天ホテル』あたりを即座に思い出させる“大”ハッピーエンド作品だ。
2月も半ばを過ぎたこのタイミングでクリスマス映画?という声はもちろんあると思うが(本国アメリカではオン・シーズンに公開されている)、ダイアン・キートンやマリサ・トメイ、アマンダ・セイフライドらの豪華キャストと有名フード・スタイリストによる色とりどりのディナーは見る者を瞬時にクリスマスの心躍る“あの雰囲気”にトリップさせてくれる。細かな設定や人物造形には突っ込みどころもあったりするものの、その雰囲気づくりの巧さがもたらす多幸感はとにかく魅力的だ。そして、そこで音楽が果たしている役割も決して小さくない。
ジェシー・ネルソン監督は、ビートルズの楽曲を散りばめた『I am Sam アイ・アム・サム』でよく知られる人。昨年はアル・パチーノが懐メロ・シンガーに扮した『Dearダニー 君へのうた』の製作も手がけている。一方、本作で“Music Archivist(音楽収集者)”としてクレジットされているT・ボーン・バーネットは、アメリカのルーツ・ミュージックやフォーク・ミュージックに精通したミュージシャン/プロデューサー。映画ファンには何と言っても『オー・ブラザー!』で広く知られる人だが、他にも『コールド・マウンテン』や『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』、『クレイジー・ハート』、『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』など数多くの映画音楽を手がけている。
そんなふたりだから、本作でタッグを組むに至ったのも自然な成り行きと言っていいかもしれない。新旧のあらゆる音源を駆使することで、バーネットはネルソン監督の考える典型的なアメリカ郊外のクリスマスの風景を見事に演出している。クリスマス・ソングだけでなく、ボブ・ディランの「北国の少女」や「If Not For You」、ニーナ・シモンの「To Love Somebody」といった楽曲の、内容とぴったりとリンクした使い方も巧い。該博な知識を持つバーネットならではの仕事ぶりだ。(後編へ続く…)(文:伊藤隆剛/ライター)
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