(…前編より続く)本作『クーパー家の晩餐会』では、豪華キャスト陣が劇中で歌ったり楽器を弾いたりするのも見どころのひとつ。ダイアン・キートンやアマンダ・セイフライドが歌える女優であることは過去の出演作が実証済みだが、本作ではクーパー家の祖父役のアラン・アーキンは元フォーク・シンガー、父役のジョン・グッドマンはその体格に見合った声量の持ち主、息子役のエド・ヘルムズはギターやピアノなどを器用に弾きこなすマルチプレーヤーだったりと、音楽的にも豊かな人材が集まるべくして集まっている。
・【映画を聴く】前編/アリソンとロバート期待の再共演も必聴! 絶妙な選曲が光る『クーパー家の晩餐会』
一家がリビングで毎年恒例の音楽会を開くシーンでは、そんな各人の特性を生かしたクリスマス・ソングの数々が披露され、歌と演奏のクォリティの高さに驚かされる。ジェシー・ネルソン監督が「クーパー家は『サウンド・オブ・ミュージック』のトラップ大佐一家のような存在」と言うのも納得できる。
音楽面でもうひとつ見逃せないのが、アリソン・クラウスとロバート・プラントによるエンディング・テーマ、「ライト・オブ・クリスマス・デイ」だ。アリソン・クラウスは米カントリー界の歌姫、ロバート・プラントは言わずと知れたレッド・ツェッペリンのヴォーカリスト。一見、異色の組合せに思えるが、このふたりの共演は今回が初めてではなく、2007年にT・ボーン・バーネットのプロデュースでアルバム『レイジング・サンド』をリリース。大ヒットを記録するとともに、グラミー賞でも5部門を受賞するなど高い評価を得ている。
アリソン・クラウスのキュートでナチュラルな美声に絡むロバート・プラントの声は、ツェッペリンの曲で聴けるようなハイトーンのシャウト系ではなく、いい感じに枯れたヴィンテージの味わい。クリスマス・ソングの新たなスタンダードとなりそうな名曲に仕上がっている。ふたりの再共演を望む声は以前から多かったが、これを機に『レイジング・サンド』に次ぐオリジナル・アルバムの制作にも期待したいところだ。
コメディ映画として軽く楽しめると同時に、音楽映画としてアメリカのルーツ・ミュージックやフォーク・ミュージック、クリスマス・ソングの歴史を知るきっかけにもなりそうな本作。緻密に考え尽くされたT・ボーン・バーネットの選曲の妙をじっくりと味わってほしい。(文:伊藤隆剛/ライター)
『クーパー家の晩餐会』は2月19日より全国順次公開される。
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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