年末年始は意外と空白の時間があるもので、その時間を使って「映画かドラマでも見ようか」とNetflixやU-NEXTのライブラリを漁りはじめるものの、結局作品を決められずに、気付けば何十回も観た作品を選んでいた。なんて経験がある方もいらっしゃるのではないだろうか。筆者も同じく、毎回それほど見たくもない『ザ・コア』を視聴するのが恒例行事になっている。
しかし今年、あるいは来年にかけて8時間ほどの空白がある方は幸せ者である。なぜなら『ウェンズデー』をビンジウオッチングできるからだ。
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年末年始のビンジウォッチングなら『ウェンズデー』
『ウェンズデー』は「映画のほうのアダムス・ファミリー」、いわゆる1991年の『アダムス・ファミリー』93年の『アダムス・ファミリー2』に登場するアダムス家の長女、ウェンズデーをベースとしたスピンオフ作品で、高校生になった彼女を描いている。
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ウェンズデーはプールにピラニアを放流するなどの素行の悪さから、数々の高校を退学になっており、今回は満を持して父ゴメズ、母モーティシアも卒業したネヴァーモア学園送りとなる。
学園には吸血鬼に人狼、セイレーンやゴルゴンなど、地域住民から「のけもの」と呼ばれている特殊な能力を持つ面々が集められている。ある日、学園がある街の外れの森で殺人事件が起こり、ウェンズデーはこれを解決すべく立ち回るというのが大まかな筋だ。
彼女は映画版と同じく残忍でモラルの欠片もなく、社会性も皆無なのだが、学園内や地域の人々との交流を経て、少しずつ成長していく。
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顔つきは学園×探偵もの
話の筋は上記のとおりで、名探偵ウェンズデーは猟奇殺人事件を解決しようと奔走する。ストーリーはかなり単純かつストレートな成長譚になっているので、年末の疲れた脳にも、年始の正月ボケした脳にもするすると入ってくる親切設計なので安心してほしい。
要は学園×探偵もので、巷間「溢れるハリー・ポッター感」と指摘されているが、あながち間違っていない。のだが、主人公はあのウェンズデーなので、アダムス・ファミリーファンならば大いに楽しめるギフトが用意されている。
そうでなくとも、ウェンズデー役のジェナ・オルテガのキュートが凄まじいの一点突破で眼福で、ころころ変わるウェンズデーの衣装を聞いたり見たりしているだけでも楽しい。
とくにスタイリングについては素晴らしく、スカートのドレープはうっとりするほどだわ、部屋着姿もゴシック+現代対応だわ、ネタバレになるといけないので少々ボカすが猫耳だわと目を休める暇がない。素材感も高級な仕様で、彼女が動いたときの服の揺れや重量感は完璧すぎてため息が出てしまう。
また、ダニー・エルフマンによる原作リスペクトの劇伴も素晴らしい。あのテーマ曲は使われないものの、ウェンズデーに似合う重厚かつゴシックな音作りになっている。
服だけでなく、物語もしっかりと現代対応
さらに、単純なストーリーでもありながら、現代に対応した多様性も盛り込んでいる。ウェンズデー役のジェナ・オルテガと父ゴメズ役のルイス・ガスマンはともにプエルトリコがルーツで、ヒスパニック系の家族の繋がりの強さに共通点をもたせているのもいい。
さらにさらに、映画版でウェンズデー役を張っていたクリスティーナ・リッチも重要な役どころで登場する。筆者はハードコアなクリスティーナ・リッチ フォロワーだが、気付くのに時間がかかり、認識した瞬間に叫んでしまった。彼女の使い方もまた、原作と今作をガッチリとシェイクハンドさせる効果を発生させてくれる。
と、つらつら細かいところを挙げずとも、『ウェンズデー』は普通に面白いし、ポップコーンだろうがお節の黒豆だろうが、何でも片手に気楽に楽しめる作品だ。もちろん、監督のティム・バートンが長年描き続けてきた「変人たちによる自由を獲得するための孤独な闘争」もしっかりと描かれている。
劇中、ウェンズデーは成長するが、「のけもの」と呼ばれている学園の面々から「のけもの」にされようとも、彼女の芯の部分は揺らぐことがない。「自分はちょっと人とは変わっている」と感じている人や、周囲から疎外感を感じている方にはぜひ見て欲しい。もちろん「年末年始見るものがない」人も楽しめることは、ウェンズデーに迫り来るイーニッド並みのテンションと距離感を以て保証する。(text:加藤広大/ライター)
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