2月28日(日本時間29日)に迫ったアカデミー賞授賞式。既に発表されている批評家や映画関係者が選ぶ映画賞を見ると、最多12部門で候補となった『レヴェナント:蘇りし者』がリードする賞レースで、『スポットライト 世紀のスクープ』『マネー・ショート 華麗なる大逆転』が追う展開となっている。
外国人記者約100人が選ぶゴ−ルデングローブ賞のドラマ部門の作品賞は『レヴェナント』、監督賞も『レヴェナント』、全米監督組合賞も『レヴェナント』が受賞した一方、全米製作者組合賞は『マネー・ショート』、全米俳優組合賞のキャスト賞(作品賞に該当)は『スポットライト』が受賞している。昨年は『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』がゴールデングローブ賞では無冠に終わったものの、全米製作者組合賞、全米俳優組合賞のキャスト賞、全米監督組合賞を制し、勢いがついてアカデミー賞に輝いたのとは対照的だ。
一方、興行成績から賞レースを占ってみる。過去10年間の作品賞受賞作の興行収入は以下の通り。
『クラッシュ』(2006年)5500万ドル
『ディパーテッド』(2007年)1億3200万ドル
『ノーカントリー』(2008年)7400万ドル
『スラムドッグ$ミリオネア』(2009年)1億4100万ドル
『ハートロッカー』(2010年)1700万ドル
『英国王のスピーチ』(2011年)1億3500万ドル
『アーティスト』(2012年)4500万ドル
『アルゴ』(2013年)1億3600万ドル
『それでも夜は明ける』(2014年)5700万ドル
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』4230万ドル
1億ドル超えは4作、5000万〜1億ドルは3作。作品賞は、ある程度観客を集めているものが受賞している。アカデミー会員も観客の1人であり、観客と同じように関心を持ち共感ができる作品を選ぶ傾向があるといえそう。
今年の作品賞候補作の興収は以下の通り(2月14日時点)。
『オデッセイ』2億2800万ドル
『レヴェナント:蘇りし者』1億6000万ドル
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』1億5400万ドル
『ブリッジ・オブ・スパイ』7200万ドル
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』6600万ドル
『スポットライト 世紀のスクープ』3700万ドル
『ブルックリン』3400万ドル
『ルーム』1200万ドル
1億ドル超えは『オデッセイ』『レヴェナント』『マッドマックス』の3作、5000万〜1億ドルは『ブリッジ・オブ・スパイ』『マネー・ショート』の2作。特に「ノミネート後に興収を大幅に伸ばした」作品は、評判が口コミで急速に広がった表れで、アカデミー会員の支持も広がり、“勢いがついて”作品賞に選ばれる可能性は十分。ノミネート後に上映館数を一気に増やして大ヒットしている『レヴェナント』が、興収面から見れば最有力だ。
なお、『レヴェナント』のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督が監督賞を受賞すれば、昨年の『バードマン』に続く2年連続の受賞。これは、ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督(50年、51年)以来、65年ぶりの快挙となる。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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