後編/アンディ・ウォシャウスキー監督がリリーになったのはこの映画のせい?

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『リリーのすべて』
(C)2015 Universal Studios. All Rights Reserved.
『リリーのすべて』
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『リリーのすべて』

(…前編より続く)世界で初めて性別適合手術を受けたアイナーを演じるのは、昨年『博士と彼女のセオリー』でアカデミー賞主演男優賞に輝いたエディ・レッドメイン。今年も候補になり、受賞はレオナルド・ディカプリオ(『レヴェナント:蘇りし者』)に譲ったが、偶然から発生した内なる変化を自覚する瞬間、戸惑いながらも自分に誠実であろうとする主人公の精神と肉体の彷徨をこのうえなく繊細に表現している。

ゲルダを演じ、初ノミネートにして初受賞を果たしたヴィキャンデルが素晴らしい。夫としてのアイナーを失いたくないのはもちろんだが、画家としてのゲルダにとって、リリーは最高のモデルでもある。肉体だけではなく心まで変わっていくアイナー/リリーと、それでも寄り添い続けるゲルダに心打たれるのは、彼女の決断を自己犠牲という枠だけに収めず、ゲルダ自身の成長として演じたヴィキャンデルの名演によるものだ。

無謀とも思える2人の行動を支えるアイナーの幼なじみの画商を演じるマティアス・スーナールツ(『君と歩く世界』)、リリーに恋する青年役のベン・ウィショーも好演。アンバー・ハードが友人のバレエダンサーを艶やかに演じている。

夫婦になり、親友になり、母と子のようにもなり……。どう変わろうとも一緒に居続けた2人は真の意味で、互いにっとての代え難いパートナーなのだ。(文:冨永由紀/映画ライター)

『リリーのすべて』は3月18日より公開される。

冨永由紀(とみなが・ゆき)
幼少期を東京とパリで過ごし、日本の大学卒業後はパリに留学。毎日映画を見て過ごす。帰国後、映画雑誌編集部を経てフリーに。雑誌「婦人画報」「FLIX」、Web媒体などでレビュー、インタビューを執筆。好きな映画や俳優がしょっちゅう変わる浮気性。

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