【映画を聴く】『世界から猫が消えたなら』前編
「LINEノベル」を映画化!
主題歌は17歳の新人シンガーが担当
佐藤健主演で、脇を宮あおいや濱田岳、奥田瑛二、原田美枝子らが固める話題作『世界から猫が消えたなら』がいよいよ公開される。プロデューサーとして『電車男』『デトロイト・メタル・シティ』『告白』『悪人』『モテキ』といった作品を数々ヒットさせてきた川村元気による初の小説を、「カロリーメイト」や「グリーンダカラちゃん」のCMで知られる永井聡監督が映像化。脚本に『いま、会いにゆきます』の岡田惠和、音楽に小林武史という鉄壁の布陣で、早くもその『いまあい』や『世界の中心で、愛をさけぶ』を超えるヒットが期待されている(実際、両作を手がけたスタッフがプロデュースなどで関わっている)。
小林武史の音楽は物語の柔らかなトーンにぴったり寄り添い、見る者の涙腺をじわじわと刺激する。古くは桑田佳祐監督『稲村ジェーン』や岩井俊二監督『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』などの映画音楽を手がけ、2010年の『BANDAGEバンデイジ』では監督にも挑戦するなど、これまでさまざまなアプローチで映像作品に関わってきた彼らしく、多彩なスコアが随所に散りばめられている。これがデビュー曲となるHARUHIが歌う主題歌「ひずみ」も、彼の作詞・作曲・プロデュースによるものだ。
もともと日本で初めてのLINEによる連載小説として執筆された川村元気の原作は、後に単行本化されて2013年の本屋大賞にもノミネート。昨今の猫ブームも手伝ってか、文庫本化されてからも売れ続け、現在120万部を記録するベストセラーとなっている。映画化に先立ってコミックスやラジオドラマとしても作品化されており、後者では主演に妻夫木聡が起用されたことが話題となった。
「LINEノベル」と聞くと、いわゆるケータイ小説的な軽くて極端な恋愛観や死生観を打ち出した“感動の押し売り”系ストーリーを想像する人がいるかもしれないが、数々のヒット作を手がけてきた川村元気だけにそのあたりのさじ加減は絶妙だ。佐藤健が一人二役で演じる、余命わずかな郵便配達員の“僕”と、彼の一部を人格化した“悪魔”。「世界からひとつ何かを消すことで、自分の命が一日引き延ばせる」という“悪魔”との取引に応じることで、“僕”はこの世にしがみつこうとする。そういった設定をファンタジーとしてナチュラルに、さらっと読ませてしまうところが巧い。
原作は特に映像化を想定したものではなく、むしろ映画ではできない表現を追求したというが、永井監督は設定にところどころ変更を加えることで“消失”の意味を強化し、原作の扱うテーマをより分かりやすく打ち出している。その監督のさじ加減もまたちょうどよく、結果としてリチャード・カーティス監督『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』やミシェル・ゴンドリー監督『エターナル・サンシャイン』、川村元気のフェイバリットだというティム・バートン監督『ビッグ・フィッシュ』あたりに通じるハートフルなファンタジー作品に仕上がっている。(後編「小林武史の才覚の鋭さを実感」に続く…)
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