『悲情城市』(89年)や、最近ではスー・チーとともに妻夫木聡らが出演した『黒衣の刺客』(15年)などで知られる台湾の巨匠ホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督。彼が手がけた青春シリーズ不朽の名作『冬冬の夏休み』(84年)と『恋恋風塵』(87年)の2本がデジタルリマスター版として生まれ変わり、いよいよ今週末の5月21日より公開となる。
・[動画]ホウ・シャオシェン監督作/映画『冬冬の夏休み』『恋恋風塵』予告編
『冬冬の夏休み』は、妹と2人で祖父の家に預けられた少年のひと夏の出来事をノスタルジックに描いた子どもたちの成長物語。映画は主人公トントンの卒業式から幕を開ける。体育館に子どもたちが整列し、卒業生代表の少女が答辞を読み上げている。会場には「蛍の光」が流れ、しばらくして「仰げば尊し」の合唱がはじまる。うっかり油断していると舞台が台湾であることを忘れてしまいそうな馴染み深い光景。しかし日本人なら不思議に感じずにいられないだろう。なぜ、台湾の学校で「仰げば尊し」が歌われるのかが。
それは、かつて日本が半世紀間この島を植民統治したことに由来する。1945年の敗戦と同時に、台湾は中華民国によって統合されたものの、皇民化政策により残された日本風の建築や唱歌は、時が流れるうちに日本で生まれたものでありながら、同時に台湾のものになっていったのだ。
ホウ・シャオシェン、チュー・ティエンウェン(原作・脚本)、エドワード・ヤン(音楽)という外省人(中国大陸から台湾に移り住んだ人)二世トリオが『冬冬の夏休み』を仕上げたのは1984年。台湾で抗日映画が集中的に撮られてから、まだ数年しかたっていない頃のことだ。一方で、映画の冒頭でトントンは友人とディズニーランドに行く同級生について楽しげに会話を交わす。日本と台湾、その絶妙な距離感がそこはかとないノスタルジーを呼び起こす。
映画『冬冬の夏休み』『恋恋風塵』は5月21日よりユーロスペースにて2週間限定公開後、全国順次公開となる。
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