人の命に値段をつけられるのか?社会派エンタメ『ワース 命の値段』に山本太郎、斎藤幸平、武田砂鉄、橘玲らがコメント
『スポットライト 世紀のスクープ』製作陣と名優マイケル・キートンが再びタッグ
9.11テロ犠牲者の命に値段をつけるという難題に挑んだ弁護士たちがいた。彼らが被害者遺族7000人を救うために闘った実話を映画化した社会派エンターテインメント『ワース 命の値段』に、東京新聞記者の望月衣塑子、れいわ新選組の山本太郎、経済思想家の斎藤幸平、作家の橘玲、ライターの武田砂鉄、憲法学者の木村草太らがコメントを寄せた。
2015年にアカデミー賞作品賞を受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』製作陣と、名優マイケル・キートンが再びタッグを組んで挑んだ本作。サンダンス映画祭でお披露目されるや、オバマ元米大統領夫妻が創設した製作会社ハイヤー・グラウンド・プロダクションズがいちはやく配給権を獲得したことも話題となった、骨太の社会派エンターテインメントだ。
これまで、『バットマン』『スパイダーマン』などのアメコミ・ヒーロー系譜の作品で知られながらも、前述の『スポットライト』や『シカゴ7裁判』(20年)など社会派作品にも積極的に取り組んできたキートン。本作には主演だけでなく、プロデューサーとしても参加している。彼は自身が演じた役柄のモデルで、原作となった回想録「What is life worth?」の著者であるケネス・ファインバーグ弁護士と面会して意気投合。その結果、本作が一気に実現へ向かったという。
キートンは、「私たちは皆、9.11同時多発テロが起こったあの日、自分がどこにいたかを覚えていますし、あの事件が国や世界に与えた影響も覚えています。この脚本は本当によくできていたので、私は俳優としてだけでなく、プロデューサーとしても参加したいと思いました。この話を伝えることは重要です」と語っている。
場面写真では、キートン演じるケン・ファインバーグが、大学の教壇で「命の価格」について講義している姿、被害者への説明会に立つ姿などが切り取られている。
“命に値段をつけることが出来るのか?”という究極の問いに、ファインバーグはどのような答えを出すのか? 本作に対し、「不謹慎ながら、しびれてしまった」と率直なコメントを寄せた田原総一朗(ジャーナリスト) をはじめ、「人の命に値段はない。そんな“常識”は9.11の被害者には適用されないのか」という望月衣塑子(東京新聞記者)など、報道の第一線で活躍する面々からも様々なコメントが届いている。
[コメント一覧]
人の命に値段などつけられる筈がない。この、あまりにも難しい問題に唸らざるを得ない。そこに自ら立ち向かっていく主人公に不謹慎ながら、しびれてしまった。
田原総一朗(ジャーナリスト)
経済学は、人々を一律に数字で取り扱おうとする。この映画は、その罪深さを告発している。人間はひとり一人異なる人生の背景を持っている。カネを超えて、その背景に迫る主人公の姿に、魂を揺さぶられた。
森永卓郎(経済アナリスト)
もう一つの9.11だ。テロとの戦いの舞台裏でこんなことが起きていたのか!知らなかった自分を恥じた。命の計算式からはアメリカ社会の素顔が垣間見えてくる。一人の弁護士の葛藤を通して「我々にとって何が大切なのか?」重い命題を突き付けられた。
柳澤秀夫(ジャーナリスト)
人の命に値段はない。そんな「常識」は9.11の被害者には適用されないのか。遺族の言葉と涙が、ケン・ファインバーグ弁護士率いる弁護団を動かす。遺族が望んだのは金ではなく、愛する人を失った痛みや悲しみを共有する場だったのでは
望月衣塑子(東京新聞記者)
調停のプロによる独自の計算式、ルールが完璧でないから正しい補償金額を出せないのではない。ときに前に進むよりも、いや、前に進むためにこそ、公正さ、道義的正しさの追求が欠かせない現実をクリアに描き出した。
風間直樹(『週刊東洋経済』編集長)
法は正義のためにある。個人の尊厳が守られ、個人が尊重されないところに、正義はない。個人の尊厳が守られない法、個人が尊重されない法ならば、誰も従わない。良き法律家に必要なのは、他者の尊厳を守り、尊重する姿勢だ。
木村草太 (憲法学者)
生命の価値は誰もが同じはずだが、交通事故の死亡慰謝料には差がつけられる。「公正(フェア)な補償額はどのように決めるのか」という倫理的な難問が、見事なエンタテインメントになった。
橘玲(作家)
「人間の可能性」について一縷の望みを持ち続けている人にこそ、見てほしい。
正義とは?公平とは?命の値段とは?答えの出ない問題に答えを出そうとするとき、
共感と対話こそがカギになるということを、この映画が教えてくれる。
山口周(独立研究者・著作家・パブリックスピーカー)
数字に置き換えられるはずのない悲しみに心を揺さぶられたのなら、映画の「その後」にも思いを巡らせたい。米国の「報復攻撃」や侵攻の犠牲となり、何ら支えを受けられずにいる、アフガニスタンやイラクの人々の命にも。
安田菜津紀(認定NPO法人Dialogue for People副代表/フォトジャーナリスト)
航空業界と富豪しか救うつもりのない政府、頭でっかちの弁護士、翻弄される犠牲者の家族。これを「美談」にするのが、アメリカの民主主義だ。
斎藤幸平(経済思想家)
100人近い被害者遺族を演じる俳優たち、その全員が素晴らしい。悲しみとやるせなさ、不条理を抱えた存在。命の価値がどう違うのか、問い直してしまう。突きつけられてしまう。私たちは、この映画を通して何百もの命と出会ってしまうのだ。
瀬々敬久(映画監督)
この映画は喪失、悲しみ、苦悩、怒り、を容赦なく映し出す。しかし同時にそれらを受容し諦めず前進する人たちの、つまり私たちの物語でもある。
三輪記子(弁護士)
誠実とは何か。信頼とは何か。煩悶する姿に答えを探し続けた。答えなんてないのでは、という疑いを持ちながら。
武田砂鉄(ライター)
一人一人の、一つ一つの命に向き合うことで、それが次々と繋がりあって僕達の社会を作っていくことがわかる。その営みにこそ”価値”がある。
ダースレイダー(ラッパー)
ルールや公平性という一見“正義”の前に、私たちは一番大切なことを忘れがちだ。目の前にいる人たちが希望を持てないルールや公平性には何の意味もないことを、この映画は改めて伝えてくれる。
浜田敬子(ジャーナリスト)
9・11テロにこんな物語があったことに驚き、弁護士の苦悩に胸を突かれ、彼らが向き合う遺族たちの癒せぬ思いに涙した。悲しみに寄り添うことで、人はどれだけ救われるのか。これはお金の話ではない、魂の物語だ。
松原耕二(ニュースキャスター)
熟慮の末に契約書を破り捨てる勇気を持つ者だけが時代を切り開く。それが弁護士であろうと、なかろうと。
水野祐(法律家・弁護士)
「命に値段をつける」というヒリヒリした現場に居合わせた気持ちになった。資本家の身勝手に忖度する交渉は人々を分断する刃。必要なのは絶望の淵にいる人々の状況を自分ごとと考える愛だ。道を拓くにはそれ以外ない、と再認識した。永田町の住人こそ本作を見るべき。
山本太郎(れいわ新選組代表・参議院議員)
我々は法の目から見ると利益を産み出す機械でしかないのか。その機械の価値は産み出す利益で決まる。しかし人の命に貴賤はあってはならないはず。これは海の向こうの話ではない。日本でも同じ問題がある。あなたのお命、いかほど?
菊地幸夫(弁護士)
20年以上経つ今でも、あの日、あの時、あの瞬間の「記憶」が消えることはない。この事実に基づく物語もまた、9・11のもう一つの「記憶」として、私の心に深く刻まれることになるだろう。
大城慶吾(月刊『Wedge』編集長)
知らなかった9.11テロのその後。命の価値を巡って対立する国家の論理と個人の思い。その狭間で苦悩する弁護士たち。自分ならどうするか…思わず考えてしまった。白か黒かではなくどの色のグレイを選ぶのか?
村尾信尚(関西学院大学 教授)
『ワース 命の値段』は2月23日より全国公開される。
・[動画]「命に値段を付けるのが君たちの仕事だ」/アカデミー賞受賞スタッフが贈る社会派エンターテインメント『ワース 命の値段』予告編
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