【元ネタ比較】『64-ロクヨン-』前編
オジサンだらけの内部対立が醍醐味
『半落ち』や『クライマーズ・ハイ』をはじめ映像化された作品も多い横山秀夫の小説「64(ロクヨン)」が映画化された。新聞記者出身だけに、事件と報道を絡めたミステリーを得意としているが、本作もまさにそれ。テレビドラマ化された『陰の季節』に始まる“D県警シリーズ”の第3作目にしてシリーズ初の長編で、2015年4月にNHKでドラマ化もされている。
たった7日間で終わった昭和64年に起き、迷宮入り。県警内部で“64(ロクヨン)”と呼ばれる少女誘拐事件を軸に、時効が1年後に迫った平成14年の警察内部を描く。主人公は刑事部の刑事として“ロクヨン”の捜査に加わっていたが、今は警務部の広報官である三上(佐藤浩市)だ。刑事部は実際に事件を捜査する刑事たちが所属する部署だが、警務部は警察内部の人事や福利厚生、監査も管理する部署であり、刑事部からすると煙たい存在でもある。事務方として見下していたりもする。
さらにそこに、広報官である三上と記者クラブの記者たちとの駆け引きや攻防も加わってくる。繰り返すが、原作者が新聞記者出身であるだけに刑事部、警務部、マスコミという内部のパワーバランスが事件解明のミステリーに大きく関わってきているのが本作の醍醐味だろう。
原作も、文学的な状況描写などよりも、シナリオを読むような読み心地で引っ張っていく。だから映像化との相性はよく、映画版も違和感なくぐんぐんストーリーで魅せていく。
ただ、原作でも感じたが、ぶっちゃけ、単純に登場人物が多い。筆者の理解力不足からかもしれないが、コレといった個性が感じられるわけでもないので覚えきれず、映像化されても黒っぽいスーツを着たオジサンがわんさか出てきてちょっぴり混乱。この人、なんだか険しい顔してるけど、どの立場の人だっけ?と思うことも。なので、記者はすぐにわかるとしても、刑事部と警務部をしっかり区別して把握しながら見ていくことをおすすめしたい。(中編「ドラマ版よりもあっさりしすぎで物足りない」に続く…)
『64-ロクヨン-前編』は5月7日より公開中、『64-ロクヨン-後編』6月11日より公開される。
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