当たり前を言っているだけなのに過激に見える理由─メディアの機能不全がYouTube人気を招いた?
#センキョナンデス#ダースレイダー#プチ鹿島#政治#日本映画界の問題点を探る#日本映画界の問題点を探る/YouTubeから映画界に殴り込み!?
【日本映画界の問題点を探る/YouTubeから映画界に殴り込み!? 3】現在、ドキュメンタリー映画界で第一線を走っている大島新監督に「日本のマイケル・ムーアになり得る!」と言わしめ、注目を集めているラッパーのダースレイダーと時事芸人のプチ鹿島。そんな2人が監督した映画『劇場版 センキョナンデス』が、2月18日より公開される。政治家だろうが、新聞社だろうが、お構いなしに真正面から突撃していく彼らの姿は、確かに『ボウリング・フォー・コロンバイン』などをヒットさせたマイケル・ムーア監督を彷彿とさせる。映画界のみならず、日本のジャーナリズムにも一石を投じようとしているようにも見えるが、当の本人たちにはそんな意識はないという。
・日本映画界の問題点を探る[YouTubeから映画界に殴り込み!? 2]/1万人動員でもまだ赤字!
「これはずっと言っていることですが、あくまでも僕たちは芸人とラッパーであって、ただ『知りたい』という思いだけでやっています。どちらかというと野次馬なので、今回も自分たちがしていることを“取材”とか“ジャーナリズム”とか言われるとくすぐったいですね。ただ、僕たちを入口にして、普段から時間をかけて取材している本当のジャーナリストの方々にたどり着いていただけたらいいなとは思います」(プチ鹿島)
テレビでもラジオでも本当はできるはず、「意外と全然ブレーキないじゃん!」となる気がしている
「僕たちがしていることは、決して特権階級でなきゃできないことではなくて、意外と誰でもできること。鹿島さんのようにいろんな新聞を読み比べてみたり、選挙の街頭演説に行ったりとか、普通にできることをしているだけです。でも、実はそれが面白いことなんだということに気づいて欲しいので、この作品がきっかけの一つになったらうれしいですね。僕たちの見方を踏まえたうえで、それぞれが自分の見方を持って考えていただけたらと思っています」(ダースレイダー)
とはいえ、国内外のあらゆるニュースをチェックする2人から見ると、いまの日本のメディアに対して言いたいことが色々あるようだ。
・[動画]1万人動員でもまだ赤字、ラッパーと時事芸人が垣間見た映画業界『劇場版 センキョナンデス』ダースレイダー×プチ鹿島 インタビュー(Part3)
「僕が一番嫌いなのは、『地上波ではできない』という表現。まるでそこに真実があるかのような言い方や過激なことをやっているみたいな売り方は、違うと思っています。僕たちも、YouTubeだから地上波で流せないことを話しているつもりはありません。ただ自分たちが面白いと思うことをしているだけで、テレビでもラジオでもどんなメディアでも同じことをしますよ。今回は、子どもの頃に好きだった熱を帯びた選挙特番がなくなってしまったと感じているなかで、『自分たちならできるんじゃない?』と思って始めただけですが、結果的に僕たちでも映画ができたわけですから」(プチ鹿島)
「たとえば、テレビでは社会的な背景が変わっていくなかで『できること』と『できないこと』を判断していると思いますが、それでも最近は蓋をすることがどんどん増えてきている。そういう意味で、健全なメディアとして機能していない感じが年々強くなっているようにも思います。でも、実はテレビでもラジオでも本当はできるはずなのに、実際はやらないだけ。原因を可視化してみたら『意外と全然ブレーキないじゃん!』となる気がしているところです。なので、僕らがしているようなことをいろんなメディアでどんどんしていったら、もっと面白くなるんじゃないかなと考えています。まあ、スポンサーが付かないという問題はあるかもしれませんが(笑)」(ダースレイダー)
『キューポラのある街』や『戦争と人間』を手掛けた日活の映画プロデューサーであった大塚和を祖父に持つダースレイダー。無意識のうちに映画へと導かれていたところもあったのかもしれないが、外からの客観的な目線を持っているからこそ感じたこともあったのではないだろうか。そんな2人が、これから映画界にどんな影響を与えてくれるのか、期待せずにはいられない。
「僕が小さかったからというのもありますが、祖父と映画の話をしたことはなく、いつもニコニコしながら国会中継を見ている人でした。亡くなってからいろんな映画に関わっていたことを知って驚きましたが、この歳になって自分も映画を作るようになるなんて不思議ですよね。でも、いまは映画に限らず、誰でも自分が面白いと思うことを出せるチャンスは増えているのではないかなと。僕らみたいにどんどん新しいことに参入していけば、結果的にいろんな人が楽しめるものができると思っています。今回の作品は、もともとYouTube番組ではありますが、それをただ劇場で流しているわけではなく、ちゃんと映画として作っているので、そこもぜひ見ていただきたいです」(ダースレイダー)
「予算一つとっても『こんなにかかるのか!』と驚いているくらい、まったくの素人なので、まだ映画業界の問題は何かというのを僕たちが言うことはできません。ただ、この映画をヒットさせることができれば、政治や社会問題を扱ったドキュメンタリー映画を集めたフェスみたいなことをしたいなと考えています。まだまだ素晴らしい作品はたくさんありますからね。観客としての恩返しというか、そういう形で映画業界を盛り上げていきたいです」(プチ鹿島)
(text:志村昌美/photo:泉健也)
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