正月、ゴールデンウィークと並んで映画興行が盛り上がる夏休み。大ヒット作続編を筆頭に話題作が7月から8月にかけて毎週のように公開される。そんな夏映画のヒットを予測する。
本命と目されるのが『ファインディング・ドリー』(7月16日公開)だ。2003年に興収110億円の大ヒットを記録した『ファインディング・ニモ』の続編。今作ではカクレクマノミのマーリン&ニモが、物忘れの激しい魚ドリーの家族を探す協力をする。
洋画実写でナンバーワンヒットの可能性が高いのが『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』(7月1日公開)。ルイス・キャロルの児童文学『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』を基に、大人に成長したアリスの新たな冒険を描いた『アリス・イン・ワンダーランド』の続編だ。10年に公開された前作は興収118億円を記録した。
実は夏映画には、前作が100億円超えとなった作品が3本ある。『ドリー』『アリス』、そして『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』(7月9日公開)だ。前作は96年に公開され、配給収入66.5億円を記録。興収換算で100億円を超えている。ファミリー向けアニメ映画が興行で強い傾向にある中、タイプが異なるSF大作。前作を知る40代以上の観客を中心に集客しそう。
邦画で本命視されるのが『ONE PIECE FILM GOLD』(7月23日公開)。原作者・尾田栄一郎が総合プロデューサーを担当。12年公開の前作は興収68.7億円をあげている。シリーズ初の4Dシアター版もあり、リピーター客も見込めるため、前作を上回る興行成績が期待されている。
ゴジラが日本で12年ぶりに復活する『シン・ゴジラ』(7月29日公開)も控える。脚本&編集&総監督を庵野秀明、監督&特技監督を樋口真嗣が務める。ゴジラと庵野監督が生み出したエヴァンゲリオンのコラボレーション企画「ゴジラ対エヴァンゲリオン」がスタート。「ゴジラ対エヴァンゲリオン」ビジュアルを使用したクリアファイルを特典とする劇場前売券が発売されているほか、Tシャツやワッペン、キーホルダーといったコラボレーショングッズの発売も続々と予定されている。14年公開のハリウッド版ゴジラは興収32億円を記録。東宝ではこれを上回る興行成績を狙っているといわれる。
『アリス』『ドリー』と7月に強力作を公開するディズニーは、8月に『ジャングル・ブック』を公開する。全米週末興行ランキングで3週連続1位を獲得し、全世界で9億2000万ドル(6月19日時点)を超える大ヒットとなっている。
大化けする可能性を秘める「ダークホース的な存在」として期待を集めるのが『ペット』だ。『ミニオンズ』を製作したCGプロダクション、イルミネーションによる新作アニメ。飼い主が外出した後、ペットたちは家でどう過ごしているかを描く。“ペット版『トイ・ストーリー』”と呼べる内容だ。
実は『ジャングル・ブック』『ペット』とも8月11日(祝、木)の公開で、同じ日に『X-MEN:アポカリプス』も公開される。6日には『秘密 THE TOP SECRET』『ルドルフとイッパイアッテナ』が始まっており、11〜14日には『ゴーストバスターズ』が先行上映される。最も混んでいる時期で、シネコン関係者は編成に頭を悩ませている。
夏休みシーズンにはファミリー客を狙う作品が多いことから、夏は大作が集中する。しかも大作ともなると1作品で2スクリーン上映もある。シネコンでは上映作品の入れ替わりが激しくなる。公開初日2日間の出足が悪いと、すぐに上映回数を減らされたり、打ち切られたりする作品も出てきそう。どの作品が夏休みを制するだろうか。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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