理不尽に当たり散らす我が子への正しい対応とは?
【ついついママ目線】
若いゆえのしんどさを思い出させてくれる『ふきげんな過去』後編
◆若い子の理不尽な八つ当たりもサラッと水に…
二階堂ふみ演じる10代の不機嫌なヒロイン・果子の前に、小泉今日子扮する18年前に死んだはずの叔母・未来子が現れる『ふきげんな過去』。果子と未来子は名前も果子=過去、未来子=未来であるように、同じ人物の過去と未来ととらえることもできる。
普通なら、若いほうが未来があって、自由でのびのびとした解放感があるように思える。しかし、この果子は未来の希望に満ちてはおらず、窮屈そうで息苦しそうだ。それに比べて未来子のイキイキしていること! 彼女は“死んだはず”だから戸籍もなく、囚われることもなくとても自由だ。
死んだことになっているから自由という設定は、ちょっと突飛でリアリティが薄いように思える。そこはひっかかるが、監督・脚本の前田司郎が舞台畑の人なので、そのような発想と設定をアリとしていると考えるとこちらもスムーズに納得できる。
単純に考えると、年を重ねたほうが背負う物が増えて縛られるように思えるが、一方で、年を取ったほうが物事を捨てて身軽になるという選択肢を取ることができるようになるとも言える。もはや人生の先は見えており、捨てることによって棒に振ってしまうかもしれない未来がとてつもなく大きなものとして感じられないからだ。
それに比べて、若くてまだまだ大きな可能性があり、未来というものに現実味を感じられない10代にとっては、未来は未知の大きなものとしてのしかかりプレッシャーをかけてくる。若さは実は、とてもしんどいものなのだ。二階堂ふみ演じる果子を見ていて、そんな当たり前のことをふと思い出した
母親としては、時に我が子から理不尽に当り散らされて面食らい、イラつくこともあるが、この若さゆえのしんどさを思い出して、サラッと水に流してあげたい。(文:入江奈々/ライター)
『ふきげんな過去』は6月25日より全国公開中。
入江奈々(いりえ・なな)
1968年5月12日生まれ。兵庫県神戸市出身。都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。
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