前編/なぜ子どもに弱さを見せられないのか? 母の死の秘密を乗り越える男の姿に学ぶ

『ミモザの島に消えた母』
(C)2015 LES FILMS DU KIOSQUE FRANCE 2 CINEMA TF1 DROITS AUDIOVISUELS UGC IMAGES
『ミモザの島に消えた母』
(C)2015 LES FILMS DU KIOSQUE FRANCE 2 CINEMA TF1 DROITS AUDIOVISUELS UGC IMAGES

【ついついママ目線】『ミモザの島に消えた母』前編
トラウマだった家族の秘密に向き合っていく

大きいものであれ、小さいものであれ、どの家族にでも秘密やタブーとされていることがあるものだと思う。『ミモザの島に消えた母』の主人公・アントワーヌも、タブーとなっている母の死の謎を抱えている。『サラの鍵』の原作者であるタチアナ・ド・ロネのベストセラー小説を映画化したミステリー・ドラマだ。

アントワーヌは大人になりきれていない男で、それが自分の母に起因しているところも含めて普遍的な男性像と言えるだろう。離婚や仕事、娘との不和などさまざまな問題がアントワーヌにのしかかり、大変なときでもいろんなことが同時進行していくのが人生というものだと痛感させられる。

アントワーヌは自分と同じように子ども時代に経験した親の死によって心に傷を持つ女性・アンジェルと出会う。しかし、アンジェルは悲痛な過去を乗り越えており、アントワーヌに話すこともできるが、当のアントワーヌは自分の過去を話すこともできない。アントワーヌが子どもっぽく見えるが、現実的で打たれ強い女性と、ロマンティストで繊細な男性との違いというものかな、と思う。

それでも、前に進もうとするアントワーヌは自分のトラウマである母の死と、ようやく向き合おうとする。目を背けずに対峙しようとするこの主人公の姿には、不器用なところはあるが、だからこそ応援させられる。そして、トラウマを乗り越えようとしていく中で、溝があった娘との関係が変化していくのもまた、胸を熱くするのだ。(後編「ありのままの自分を見せる〜」に続く…)

『ミモザの島に消えた母』は7月23日より全国公開される。

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