(…中編「キラッキラの美青年を3次元化できるか!?」より続く)
サスペンスに軸足を置いてしまった大友監督
清水玲子原作の本格的な警察モノサスペンスである少女漫画「秘密 THE TOP SECRET」が実写映画化された。死んだ人の脳に残された記憶を映像化することによって事件の謎を解明する“MRI捜査”に携わる、警察庁のエリート集団・通称“第九”の奮闘を描く。
ロングセラーとなるほど根強い人気なのは、第九の薪と青木、薪の亡き親友の鈴木たちが見せる男たちの絆から、強烈なほどのBL臭が香り立ち、女性たちを惹きつけて止まないから。絵柄もキラキラBL路線で描かれ、人気キャラクターはプライドが高くて小柄で童顔な美人(男だが)室長の薪だ。彼を演じるのは生田斗真だ。
キャラクター愛が強い腐女子たちの間では予想通りブーイングとなった。生田斗真はイケメンだけれども、華奢なお姫様キャラとはイメージが程遠い。原作のように映画でも薪は失神するが、生田斗真が演じるとキャラクターの性質というよりも何かの伏線のようで、何事が起きたのかと意味深に受け止められてしまう恐れもある。
第九の実直な新人の青木は岡田将生が演じ、薪の亡き親友でありトラウマでもある鈴木には松坂桃李が扮し、2人とも悪くはないが、原作ほどキャラが立っていない。というか、男たちの人間ドラマにBL風味どころか、そこまで深い絆が感じられない。
監督は『るろうに剣心』や『ハゲタカ』の大友啓史で、男性の大友監督が重きを置くのは人間ドラマよりも、“MRI捜査”と事件解明のサスペンスだ。一応、そちらのほうがメインストーリーなのだから、当たり前といえば当たり前だが……。原作にはない、いかにもSFサイバーっぽい装置が使用されたり、第九とは対局の叩き上げの刑事・露口という映画版オリジナル・キャラクターが登場したりして物語を盛り上げるが、原作に色濃く漂いファンを熱狂させるエッセンスは消え失せてしまっていて、ファンの反応が気になるところ。
旧シリーズは全12巻あるうちの1、2巻である絹子と貝沼のエピソードを中心に映画化しており、ボリューム的にも限界があったのだろう。絹子を原作よりもさらに妖艶なムードにし、デブおじさんの貝沼は吉川晃司がスタイリッシュに演じるなど、原作よりも漫画っぽい味付けにする演出もなされている。
BL風味を期待する腐女子のみなさんは生田斗真演じる薪と松坂桃李演じる鈴木の白昼夢のような幻想シーンにご注目を。1滴のBL風味でも脳みそを腐らせることができる腐女子ならたやすく妄想を膨らませられるだろう。何が起こるわけでもないが、甘美な幸福感が漂っていてドキドキできるかもしれない。生松か、松生か、もしくはリバか、どのパターンで妄想するかはあなたのお好みで!(文:小野田礼/映画ライター)
『秘密 THE TOP SECRET』は8月6日より全国公開される。
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