『ちはやふる』『64-ロクヨン-』…
大作映画で“大流行”の前後編2部作方式
近年増加傾向にある前後編2部作。今年も『ちはやふる』(日本テレビ)、『64-ロクヨン-』(TBS)が公開され、来年も『3月のライオン』が2部作での公開を発表している。
2部作映画の勃興は『デスノート』から始まった。06年に公開され、前編が興収28.5億円、後編が52億円。製作にあたった日本テレビでは後編の公開直前に前編をテレビ放映。それまでは、映画のテレビ放映は公開してから1年後というのが業界ルールだったため、公開からわずか5ヵ月後の放映はテレビ業界で物議を呼んだが、興行収入は2倍近い伸びを見せた。この『デスノート』の大成功をきっかけに2部作が増えていった。
【2部作映画の主な興収】
『のだめカンタービレ 最終楽章』(09年・10年)41億円+37.2億円
『GANTZ』(11年)34.5億円+28.2億円
『僕等がいた』(12年)25.2億円+17.2億円
『劇場版 SPEC〜結〜』(13年)27.5億円+20.6億円
『るろうに剣心』(14年)52.2億円+43.5億円
『寄生獣』(14年・15年)20.2億円+15億円
『ソロモンの偽証』(15年)2作とも10億円未満
『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(15年)32.5億円+16.8億円
※3部作『20世紀少年』(第1章=08年・第2章と最終章=09年)39.5億円+30.1億円+44.1億円
2部作が増えていった理由としてまず挙げられるのは、原作となるコミックや小説が長い点だ。コミック全巻を映画化できるわけではないが、1本の映画にまとめるよりは2本の方が物語にメリハリをつけて映画化しやすい。2部作公開が前提であれば巨額の製作費を投入でき、スケール感のある映画化が可能だ。また一気に撮影するため俳優のスケジュールを抑えやすい点もある。
ちなみに、上記の2部作の配給元は『ソロモンの偽証』(松竹)を除き全て東宝。製作元は東宝をはじめ、日本テレビ、フジテレビ、TBSとさまざまだが、「大作は東宝配給がヒットしやすい」といわれており、2部作を作る会社は東宝に配給を任せたがるようだ。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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