時代が『大奥』に追いついた! 男女逆転の江戸時代を描いたドラマが大ヒットしている理由とは?
男女逆転の世界を描いているだけじゃない、現代の問題が詰まった作品
人気コミック『大奥』がNHK「ドラマ10」で実写ドラマ化され、大反響となっている。大奥を扱ったドラマというと、将軍の後宮である大奥を舞台に女たちのマウントの取り合いが展開するのが定番だが、この『大奥』はその逆。男女が逆転したパラレルワールドの江戸時代が舞台となっていて、大奥も女性の将軍に仕える男たちの世界となっている。
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原作は『きのう何食べた?』『西洋骨董洋菓子店』など映像化された作品も多い、よしながふみによる同名コミック。江戸幕府、3代将軍・徳川家光の時代、若い男子のみが感染する謎の疫病「赤面疱瘡」が国中に流行る。感染すれば“数日で死に至る”恐ろしい病で、男子の数が著しく減り、社会構造は激変。女子はこれまでの男子の代わりとして労働力の担い手となり、あらゆる家業が女から女へと受け継がれるようになる。家光も病に倒れ、秘密裡に将軍職は女子へと継がれていく。男子は種馬として大切に育てられ、江戸城大奥までもが希少な男子を囲い、「美男三千人」と称される「男の世界」となっていった。
この『大奥』が今、実写ドラマ化されてどうしてここまでヒットしたのだろうか。理由のひとつに、本作にジェンダー問題、貧困、政治、そして人々を脅かす疫病、と今の日本が抱える問題が詰まっていることが言えるだろう。前述で女たちのマウントの取り合いの逆と言ったが、本作で描かれるのはそれだけではないのだ。時代が『大奥』に追いついたとも言える。
本作はさまざまな問題を盛り込みながら、それぞれの心情も丹念に描いてドラマティックに繰り広げており、ドラマ版もしかり。原作コミックに忠実ではなく、サクサクとストーリーが進んでいくにもかかわらず、骨子をとらえて見る者を引き付ける。
女性の悲しみ、毒親、貧困など今に通じる要素もあり、官能的な恋愛もあり
将軍の代によってドラマの雰囲気は変わり、8代将軍吉宗&水野祐之進編は吉宗だけに人情味のある物語が展開。吉宗を演じる冨永愛はさっそうと馬で駆ける姿もカッコよく、祐之進演じる中島裕翔(Hey!Say!JUMP)は愛嬌豊かだ。
男大奥の始まりが描かれた3代将軍家光&万里小路有功編では家光を堀田真由、有功を福士蒼汰が演じ、女性将軍にさせられた家光の過去や子を為せない有功との悲恋が涙を誘った。
5代将軍綱吉&右衛門佐編では綱吉に仲里依紗、右衛門佐に山本耕史が扮した。2人の駆け引きを見せながら、子を無くして毒親に苦しむ綱吉の姿が切なく映った。
男女だけでなくさまざまな業をあぶり出す恋愛劇は胸に迫るものがある。そして、将軍が女性として世継ぎを生む道具のようである哀しみや、毒親からのプレッシャー、悪政が続き人々は貧困に苦しむさま、容赦なく猛威を振るう疫病などなど、今の日本人の共感を呼ぶ要素が多い。さらに、なかなかに赤裸々なベッドシーン(江戸時代だからベッドはないが)も官能的であり、情感も豊かだ。これだけの魅力がそろっていれば話題作となっていることも大いに頷ける。
こまやかな心情が描かれている原作コミックもおすすめ
今は8代将軍吉宗の時代に話が戻り、疫病対策や政治を執り行うさまが描かれており、見たことがない方もこれから見ても楽しめるのじゃないかと思う。ドラマシリーズはシーズン2が秋に放送されることも決定しているので、ぜひチェックして見て欲しい。また、興味のある方は原作コミックもおすすめだ。よりこまやかな心情や複雑な人間関係と思惑を読み取ることができるだろう。(文:牧島史佳/ライター)
◆ドラマ10『大奥』 NHK総合・火曜よる10時~10時45分
次回放送/2023年3月7日「八代将軍吉宗・水野祐之進編 (9)」
あらすじ/吉宗(冨永愛)は、江戸で発生した『赤面疱瘡』に効くかもしれないと、ある物を試してみるが、敗北に終わる。この一件に責任を感じた水野(中島裕翔)からの訴えで、吉宗は大きな決断を下すことに。それと同時に吉宗を悩ませるのが、長女の家重(三浦透子)。家重は、体を思うように動かせない苛立ちから周囲を困らせることが多いのであった。そんな中、新たに家重の小姓となった龍(當真あみ)は将棋であることに気づく。
◆よしながふみ作『大奥』
少女漫画誌『メロディ』にて2004年8月号から連載され、2021年2月号にて最終回を迎えた。コミックス全19巻が発売中。
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