ラブコメ、アクション、ホラー……。どんな映画でもも、ついつい“子育て”に結びつけて見てしまうのママさんライターが、話題作をママ目線で取り上げます!
(…中編「無自覚いい子ぶりっ子に嫌悪感。依存女子の描き方もリアル!」より続く)
【ついついママ目線】『聲の形』後編
時には子どもの前で号泣する意味
「このマンガがすごい!2015」のオトコ編第1位をはじめ数々の賞に輝いた、大今良時の同名のベストセラーコミックを映画化した『聲の形』。主人公は小学校時代に、聴覚障害を持つヒロイン・硝子をいじめていた男の子・石田将也。糾弾されて逆にいじめの標的となり、高校に進んでも孤独と自己嫌悪と闘っている。
本作は障害やいじめに焦点を絞って問題を追及しているのではなく、集団という社会に身を置いて人とコミュニケーションを取って生きていくことの難しさという普遍的なテーマが描かれている。迷い苦しみ、わからないながらもなんとか前に進もうとし、それでもやっぱり挫けてしまい、懸命にあがく若者たちの姿は、大人として「しっかり見守ってやらないと」という気持ちになる。
とはいえ、小難しいばかりじゃないから、まずは子どもを誘って見に行って欲しい。コミカルで笑えるシーンもあるし、ヒロインは賛否両論あるが、いい子で可愛くて萌える。
こちらも賛否両論あるが、やっぱりコレがないと10代が食い付かない恋愛要素もある。この点は、映画化の常として恋愛要素を全面に押し出すことが多いので危惧したが、さすが良質作を生むことに定評がある京都アニメーション作品、恋愛要素は控えめで胸をなでおろした。
映像ももちろん京アニ・クオリティで印象的なシーンが散りばめられている。子どもにも魅力的に映る作品だろう。なんといってもアニメだし。
鑑賞後に子どもが何か話したそうなら、ぜひ聞いてあげてほしい。でも、無理に話し合いをする必要もない。こういう作品は共有体験をするだけで十分意味深いから。
見るときはどうぞ、ハンカチを忘れずに。試写室でも、鼻水をすすり上げ、涙をハンカチで拭う様子が見られた。子どもの前で涙を流すのはちょっと恥ずかしいかもしれないけれど、親も何かを感じ取っていることがわかるだけでも、きっと子どもは心強いハズだ。
また、日本語字幕付き上映の実施も決定していることを付け加えておく。(文:入江奈々/映画ライター)
『聲の形』は9月17日より全国公開される。
入江奈々(いりえ・なな)
1968年5月12日生まれ。兵庫県神戸市出身。都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。
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