成長に陰り、中国映画市場に衝撃を与えた減収。課題は品質の向上?
近年、めざましい急成長を遂げた中国映画市場だったが、ここに来て急成長に陰りが見える事態となり、中国の映画業界に衝撃を与えている。
特に昨年までのサマータイム期間の興行収入の伸びは大きく、2013年からの夏期(6月-8月)の興収は毎年30%程度の伸びを記録。昨夏の中国市場での興収は、上映本数86本で1864.5億円を稼ぎ出し、2000億円へと迫る勢いだった。
だが、過去最多の合計100作の映画が上映されたにもかかわらず、今夏の興収は約1864.3億円と昨年から減収という結果になり、衝撃を与えた。中国メディアはその敗因を、大きく3つにまとめている。
1つは大ヒット映画の不在だ。先述した通り上映本数こそ過去最多だったが、全体を牽引するような作品が不在だったことが指摘されている。
昨年の夏期に上映された作品のうち、上位5作品の総興収は約1005億円。だが、今夏の上位5作品の総興収は約724億円で約28%の減収となっている。また、昨夏のNo.1映画『モンスター・ハント』(捉妖記)は興収366億円。さらに、興収10億元(約150億円)を超えた作品が3作もあった。
一方、今夏は10億元(約150億円)超の作品は『ウォークラフト』1本だけ(※)。それも興収221億円と、『モンスター・ハント』に比べて大幅減収となった。(※第2位だった『Time Raiders』は9月11日(上映39日目)に10億元に到達)
2つめの敗因は、品質の低さだ。
映画市場の発展と共に観客の“見る目”も高まり、作品に対する評判基準も年々厳しくなっているが、中国の国産映画の質は観客の要求に追いついていないようだ。
今夏の上映作品のうち、中国映画は82本、外国映画は18本と圧倒的に中国映画が多くなっている。だが、中国の多くのユーザーが使うコミュニティサイト「douban」の映画評価ページでは、評価6点以上を得た31本のうち約半分の15本が外国映画。一方、評価が5点以下の44本のうち43本が中国映画で、自国作品への評価は厳しいものとなっている。
これは、近年、人気小説、ゲームなどを基に作られた映画、いわゆる「IP映画」が増えつつあるということが大きく影響している。IP映画は原作ファンの注目度は高いものの、脚本、映像、俳優の演技などの質が劣ることも多いため評価も芳しくなく、興収も予想を下回ることが多い。
原作人気に安易に便乗した作品の増加も、中国映画の評価を押し下げていると言えるだろう。
3つめの敗因とされているのが、配給能力の問題だ。
配給会社が自社映画のデータを正確に把握できていないことから、計画的な上映編成ができず、自社作品を早めに上映させることだけに注力した結果、同時期に多くの話題作が上映されてしまい観客が分散。上映3週目に入ると観客がほとんどいなくなってしまった映画も多かった。
ライバル作品の動向をうかがいながら、どの作品をどの映画館でいつ上映するのかを決める。そういったことを緻密に計算して実行していれば観客の取りこぼしも防げるわけだが、業界関係者は「配給会社自身の改革」や「関連企業による映画市場のさらなる研究」が必要と指摘している。
業界にショックを与えた今夏の映画市場の低迷だが、「昨年の数値が高すぎたために低迷と感じられるが、今夏の状態が正常」という意見もある。いずれにせよ、作品の品質向上と配給システムの改善が、今後の映画市場の成長を握る鍵であることは確かだろう。(文:徐隆)
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