自堕落な毎日を過ごす冴えない男が主人公
今回の「どこまでもダメな人」は、エドガー・ライト監督の長編デビュー作『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)です。
ライト監督はイギリス出身の奇才で超映画オタク。2021年公開の『ラストナイト・イン・ソーホー』では、幻想的かつサイコな世界観を描き、コアな映画ファンからも高評価を得たのが記憶に新しいところですね。この監督は、配役もさることながら、音楽の使いかたが特徴的。このシーンでこの曲来るか! と見ている人をワクワクさせてくれます。過去の名作へのオマージュも盛りだくさんでニヤリ。通なオタク好みの通なオタク監督なんですね。脚本は、ライト監督と主演のサイモン・ペッグが共同で手掛けています。また、ペッグと相棒役のニック・フロストは私生活でも仲良し。息の合ったアホコンビぶりが思う存分見られますよ!
・【どこまでもダメな人】「もうしません」と言いつつ反省しない男たち~『ハングオーバー』シリーズ~
さて、簡単なあらすじを。家電量販店で働くショーン(サイモン・ペッグ)は、冴えない毎日を送る29歳。威厳もなければ人望もなく、17歳の同僚にもバカにされています。ルームメイトと借りた家には、さらに冴えない親友のエド(ニック・フロスト)が住み着いています。エドは働かず、家でひたすらプレイステーションとビールの日々。ショーンとエドの行きつけは、掃き溜めのようなパブ「ウインチェスター」。ここでもビールをあおり、豚皮スナックをかじってはだらだら。まさに、死んだように生きる毎日。ショーンはすでにゾンビ状態なんですね。
サイモンの恋人のリズは、毎回のエド同伴の飲むだけデートにウンザリ。3年目の記念日をスルーされた挙句、レストランの予約を忘れられていたことで、リズの我慢は限界突破。ショーンは振られてしまうのでした。そしてある朝、町は本物のゾンビで溢れかえっていたのでした……。
気が利かないどころの話ではない
「いっつもおんなじ飲み屋に連れていかれてぇー」「彼氏が毎回デートに友達連れてきてぇー」「しかもその友達と一緒に住んでてー」「ぜんぜん気が利かない」「そもそもつまんねえんだよ(怒)」
ショーンのような彼氏とうっかり付き合ってしまった人の愚痴が、カウンターの隅から今にも聞こえてきそうです。日本でも、この手のタイプは彼氏候補として最悪の部類ではないでしょうか。友達が付き合いそうになったら、とりあえず全力で止めるような。気が利かないのは我慢できても、毎回のデートに友達同伴というのはもう意味が分かりませんし許せません。彼女にしてみれば、自分の優先順位の最下位ぶりに絶望するのも無理はないので、さっさと別れて次に行くのをオススメしたいところです。が、この後まさかの元サヤに……?
「信頼できないけど、信じてる」 ――リズ
“ゾンビの動きを真似しつつ周囲と馴染みながらパブに入る作戦”に出るショーンと元カノたちですが、途中であっさりバレて、ゾンビたちに囲まれてしまいます。そこで皆を救うために、ゾンビをおびき寄せ、走り去るショーン。元カノたちは無事店内に避難しますが、ショーンは戻ってきません。
「逃げたんじゃないか」という友人に、「絶対に戻ってくる」と言い張る元カノ・リズ。記念日とかレストランとかのことで信頼できないっていってたじゃないか、と問われると「信じてるから」とまっすぐな瞳で答えるのでした。
「これだ!」と思いましたよ。
気が利かない、彼女をこじゃれたレストランに連れてもいけない、変な親友を見捨てられない……。彼氏としてはダメかも知れませんが、人としてはマジ信用できる。これ、大事だと思いませんか? というか、これしか大事じゃないんじゃないかと筆者は思うわけです。よって、ショーンは最高。リズは人を見る目が確かなんですね。声もかわいいし。
ゾンビがウインチェスターに雪崩れ込んできて、銃撃戦に。そのときにかかるクイーンの「Don’t stop me now」は最高です。ほかにも、ナイスなシーンにナイスな選曲が続きます。エンディングではクイーンの「you’re my best friend」でホロリとさせてくれますよ。パニックが終わり、物語はいつもの日常へ。……でも、何かが違っています。それは、見てのお楽しみということで、今回はおしまい。(文・イラスト:逸見チエコ/作家)
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