【拡大する中国市場/前編】
●エンタメ分野で大きく出遅れる日本
14億人に迫る巨大な人口を背景に拡大を続ける中国市場。「中国のエンタメ分野では韓国勢の存在感が大きく、日本は出遅れています」と話すのは10年以上、中国でエンタメビジネスを行っている柏口之宏氏だ。柏口氏はセガに入社後、2002年から中国に駐在。その後同社を退社し、2011年にアニメやゲームなど日本のコンテンツの中国市場展開をサポートするアクセスブライトを設立している。
・深刻すぎる中国のネット炎上、言葉の暴力で自殺するタレントが相次ぐ
韓国は人口が約5200万人と日本に比べて半分以下と少ないため、市場も小さい。そこで、中国など海外を念頭にビジネスを展開している。しかも国を挙げて映画、音楽、タレントの輸出に注力。携帯電話や化粧品などの輸出と合わせて総合的に行っている。例えば、サムソンの携帯電話の中国での宣伝には人気韓国人俳優を使い、人気アーティストの少女時代が韓国の化粧品を宣伝する。上海の観光スポットの新天地を韓国政府がジャックして、化粧品、映画、コンサート、キャラクターの壁紙を張り、韓流の一大エリアにしたこともある。
●海賊版を前提とした戦略が必要
中国のエンタメ分野でよく問題視されるのが海賊版で、DVDや音楽はビジネスにはならない。中国に進出した韓国勢も事情は同じだが、「音楽はライブで稼ぐことに振り切っており、チケットが10万円もすることもある。一方、日本勢を例にとるとアニメ映画『STAND BY ME ドラえもん』が大ヒットして、主題歌などは現地で大量に違法ダウンロードされているが、韓国や台湾の歌手などのように現地でコンサートを開くことはほとんどないので収益に繋げられていない。『海賊版があるから、儲からない。ひどい国だ』で終わらずに、海賊版を前提とした戦略が必要でしょう」。
日本のエンタメ分野で、中国で人気の大きなジャンルの一つがアニメ。海賊版だが、字幕が入り、日本の放送とほぼ同時にネットにアップされている。『ONE PIECE』『NARUTO -ナルト-』『ドラゴンボール』などの人気アニメの再生回数は国産のものよりケタ違いに多く、コスプレサミットでは日本のキャラが多いという。
そんな中、中国製アニメ映画『西遊記之大聖帰来(原題)』が昨年公開され、中国アニメ映画歴代No.1ヒット作品となった。今までの中国アニメは、デキの悪さから自国民からも敬遠されていたきらいがあったが、この『西遊記』で状況は大きく変化。日本でも東京アニメアワードフェスティバル2016で上映され、「コンペティション部門・長編アニメーション」で優秀賞を受賞。審査をしたアニメ製作者をうならす出来映えで、アニメ大国・日本の地位を危うくする作品といえるだろう。(後編に続く)
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