【拡大する中国市場/後編】
日本の人気ゲームは軒並み敗退
「中国が日本に求めているのは原作・シナリオ・(作品の)世界観です」(アクセスブライトの柏口之宏社長)。中国では、言論統制が強すぎることも遠因で、小説家や漫画家などのクリエイターが生まれにくく、育てる土壌もない。一方、日本では育成システムができあがっている。漫画家志望や小説家志望は原稿を出版社に持ち込み、編集者と一体となって作品を練り上げ、キャラクター設定ができあがっていく。マンガ誌に掲載されても人気投票で選別され、人気のない作品は落ちていく。
そんな優れた日本のマンガを題材に、中国で実写ドラマ化&映画化するプロジェクトが『ブラック・ジャック』だ。アクセスブライトが業務・資本提携する中国の映画製作配給会社大手エンライトから、今までのヒット路線である“ラブコメ”以外の路線に加え、もう一つの柱として「社会派路線を立ち上げたい」と同社が依頼を受け、『ブラック・ジャック』をピックアップ。手塚プロと交渉にあたった。
プロジェクトの概要はこうだ。エンライトでは動画配信サービス「先看(センカン)」を立ち上げている。まずテレビシリーズのシーズン1、全13話をセンカンをはじめとする高品質なネットドラマで配信し、その後映画化。映画は俳優も変えて豪華に作る。以降、シーズン2→映画→シーズン3→映画と続ける。
「お父さん世代は『ブラック・ジャック』を知っているが、若い世代は知らない。そこで、ネットで若い世代に『ブラック・ジャック』を見てもらい、その後の映画には親子2世代に来てもらう」。
一方、スマホゲームでは日本の人気キャラクター、キティちゃんを使って、中国で製作する。実は日本のスマホゲームは中国でローカライズされているがうまくいっていない。
「ユーザーの嗜好が違う。日本は一人で遊ぶが、中国は最初からソーシャルゲーム、対人戦や誰かと一緒にプレイする。FPSなども大人気ジャンルで相手との競い合いが激しい。日本で、モンスターハンターが協力プレイ、一緒に狩りに行くのとは異なる。キティちゃんは対戦というわけにはいかないので、ほのぼのとみんなで遊ぶが、自分のパークを作り『私の観覧車の方が豪華だ』と競い合うような要素も入れている」。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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