【元ネタ比較】『何者』中編
原作では実体験に基づいたしんどさが伝わるが…
朝井リョウ原作の直木賞受賞作「何者」が、佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉ら豪華キャストで映画化された。演劇に力を入れていた大学生の主人公・拓人が、同居人でバンドマンの光太郎や、光太郎に片想いしており拓人は密かな想いを寄せる瑞月、瑞月の友人の理香、理香の彼氏の隆良らと情報交換しながら就職活動を進めていく様子が描かれる。その模様で重要なカギとなってくるのはSNSの存在だ。
1人が表と裏、もしくはもっと複数のアカウントを持つのが当たり前の若者世代、登場人物たちも隙あらばつぶやいて心情を吐露する。そこで見えてくるのは実際に顔を突き合わせあせてやり取りしている外面と、SNSでつぶやく心の声。しかも、SNSでさえ、ありのままではなく自分をよく見せようという見栄でコーティングされている。理香は意識高い系女子だし、隆良はクリエイターぶった痛いヤツだ。
ただ、“何者”というタイトルを冠しているのだから、何者でもない若者が自分探しに模索する様をもっと示して欲しかったなぁという物足りなさはあった。それでも、 やはり原作には生々しさがあって、ちゃんとしんどい空気が漂っている。
原作者である朝井リョウは自身の就活体験を作品に活かしたそうだし、実際に会社員として働きながら「何者」を執筆していたという。しかし、映画版ではしんどく淀んだ空気があまり感じられなかった。一般論として「就活って辛いもんだよね〜」と形だけでしか伝わってこなかったように思う。(文:入江奈々/映画ライター)
『何者』は10月15日より全国公開される。
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