【映画を聴く】番外編「原田知世」後編
歌い手としての原田知世の魅力
90年代以降、歌手としての原田知世の活動を支えたキーパーソンは鈴木慶一、トーレ・ヨハンソン、伊藤ゴローの3人だ。まず鈴木慶一は前編で触れた通り、92年のアルバム『GARDEN』を全面プロデュース。「早春物語」をヨーロピアンな雰囲気にリアレンジして収録するなど、それまでの原田知世になんとなく漂っていたアーティスティックな雰囲気をうまく掬い上げて具象化することに成功している。鈴木慶一とのコラボレーションはその後も続き、カヴァー集『カコ』、フレンチ・ポップ調にまとめられた『Egg Shell』の3部作へと発展していく。
“角川映画の申し子”として活躍した80年代以降、歌手としては大きなヒットがなかった原田知世を再ブレイクさせたのがスウェーデン人プロデューサー、トーレ・ヨハンソンだ。世界中でヒットしたカーディガンズやクラウドベリー・ジャムをはじめ、日本でもBONNIE PINKやカジヒデキを手がけて一大スウェディッシュ・ポップ・ブームを巻き起こした人だが、中でも原田知世の97年作『I could be free』は両者にとって代表作と言える仕上がり。昨年、アルバムから4曲を抜粋したアナログ盤が再発されるなど、いまだ根強い人気を誇っている。
いよいよ佳境のドラマ『運命に、似た恋』を見て彼女に興味を持った若い人から、80年代はよく聴いていたけど最近はノーチェックだったというご無沙汰のファンまで、幅広い層が心地よく聴ける作品に仕上がっているので、まずはこの『恋愛小説2』から歌い手としての原田知世の魅力に触れてみてはいかがだろうか。(文:伊藤隆剛/ライター)
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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