ダ・ヴィンチの名画に隠された謎が世界中で旋風を巻き起こした『ダ・ヴィンチ・コード』から始まるシリーズ第3弾『インフェルノ』。トム・ハンクス演じる主人公のラングドン教授が様々な謎解きに挑戦していくこの作品で、実は大きなテーマになっているのが人口過剰問題だ。本作では、人口が確実に増え続ける中、このまま何もせず、100年後に人類が滅びるのを待つか、そうならないために今、人類を強制的に半分に減らすかという究極の選択が観客たちに突付けられる。
数字を使って人口増加の恐怖を説明するそのリアルすぎる世界観に、シリーズ全作品でメガホンをとってきたロン・ハワード監督も“議論を呼ぶ映画”と断言。そこで、本作を一足早く鑑賞したマスコミ関係者を対象に「今、人類を半分に減らす」or「100年後に人類が滅びる」というアンケートを実施、50名から回答を得た。それを見てみると、監督の言葉どおり議論を呼ぶ結果になっていることがわかった。
シリーズ生みの親である原作者ダン・ブラウンが「世界の人口がこの80年で3倍に急増したと知り、人口抑制を悪役の目的にした」と宣言する本作。悪役であるゾブリスト(ベン・フォスター)は「人口の増大は災害だ」と人口過剰問題への懸念を積極的に唱える生化学者で、物語は彼が自ら生み出したウィルスをばらまき“人口を半分に間引く”という計画を目論んでいるところから幕を開ける。
こうしたゾブリストの計画に対し賛否を問いかけたところ、「100年後に人類が滅びようとも、今生きる人々の命を守る」というゾブリスト否定派が83.6%と多数派を占めた。否定派の意見は、その理由によって主に3つにわけられる。
1つ目は「半分に減らされる側を選択する権利や能力は誰にも存在しない」「1人の人間が勝手に歴史を変えることはやめるべき」という、人の命を奪うことへ倫理的に反対だという人たち。2つ目は「自分が生きている時間の未来しか考えられない」「100年あれば新たな解決策が見つかるはず」と、100年後の未来が想像できず自分にはあまり関係ないと考える人たち。3つ目は「自分が減らされる方に入っちゃうと嫌」「身近な人の生命の保証がない以上、減らす側は選べない」と、ゾブリストの主張には理解を示しつつも自分や身近な人が減らされる側になることを懸念する人たち。
一方で、「人類が生き延びるために、今、人類を半分に減らす」ことに賛成するゾブリスト支持派も10.9%と少数派ながらいた。彼らの意見は「生命という存在を考えるなら人類だけ生きるとはおこがましい」「このまま増えてはいけない。減らす努力をすべき」といった身近な人口過剰問題に対してもっと社会が危機感を持つべきというものや、「死は避けられないので死んでも大丈夫」「自主的に減る方を選択する人もいるのでは」という、減らされる側を受け入れる意外な意見もあった。さらに「ゾブリストにはインパクトがある」と、彼の大胆な計画とその説得力に魅了され支持したいという声も上がった。
はたして自分は、ゾブリストの計画に賛成なのか、反対なのか? そんなことを問いかけてみたくなる映画に仕上がっている。
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