(…中編「酸いも甘いも経験した“なまいきシャルロット”がもの悲しいシングルマザーに」より続く)
【映画を聴く】『誰のせいでもない』後編
巨匠監督が描く、3Dによる感情表現にも注目
シャルロット・ゲンズブールのキャリアにおいて、女優活動と両輪になっているのがミュージシャン/歌手としての活動だ。女優ほどハイペースではないものの、近年その活動がまた活発になってきている。
1984年、父のセルジュ・ゲンズブールとのデュエット・ソング「Lemon Incest」で歌手デビュー後、同じく父の全面プロデュースによるアルバム『Charlotte for Ever』をリリース。本格的に歌手活動を開始するかに思えたが、その後はアルバムなどのまとまった作品をリリースすることなく、ほぼ女優業に専念。2006年の『5:55』が20年ぶりの2ndアルバムとなった。ナイジェル・ゴドリッチのプロデュースによる、レディオヘッドなどとも共鳴する同時代的なオルタナティブ・ロック寄りのサウンドで、セールス面でも大きな成功を収めている。
本作での彼女は基本的に女優業に徹しているが、息子を寝かしつけるシーンでさりげなくスコットランドの民謡「Chì mi na mòrbheanna」を歌っていたりするあたりが、歌手としてのシャルロットのファンには見逃せないところ。ヴィム・ヴェンダース作品が初めてとは思えないほど、その存在が映像になじんでいる。
本作は、通常の上映に加えて3Dでの上映も行なわれる。事前に見ることのできたサンプルは2D版のDVDだったが、ところどころに3D感を匂わせるシーンが登場してハッとさせられた。このことからも分かるように、ヴェンダース監督は本作をプロットやロケーションだけで見せるのではなく、“映像体験”として感じさせようとしている。ジェームズ・フランコやシャルロット・ゲンズブールの内面から湧き上がる感情が3Dでどのように描き出されるのか、その時にアレクサンドル・デスプラの劇伴がどのように見る者に響くのか、劇場で確かめたいと思っている。(文:伊藤隆剛/ライター)
『誰のせいでもない』は11月12日より全国順次公開。
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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