「60年代の映画の匂い」と坂本龍一も絶賛! 半野喜弘の初監督作品

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『雨にゆれる女』
(C)「雨にゆれる女」members
『雨にゆれる女』
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【映画を聴く】『雨にゆれる女』前編
世界的に活躍する音楽家・半野喜弘

音楽家の半野喜弘が初めて監督を務めた長編映画『雨にゆれる女』が公開される。本当の名前を隠して町工場で働く男と、彼のもとに突然預けられた女。お互い謎だらけの男女が生活をともにする中で惹かれ合うようになる過程と、その悲劇的な結末を描いている。半野監督は音楽はもちろん、脚本や編集も担当。創作の拠点とするパリで14年前に偶然出会って以来の仲だという青木崇高が主役に抜擢されている。

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音楽家としての半野喜弘は、まずエレクトロニックミュージックを基盤としたソロ作品で知られる。多数のヴォーカリストを迎えた2003年の『Lido』と2005年の『Angelus』は、人間の声と生楽器、エレクトロニクスが絶妙なバランスで融和した、今も聴き継がれる傑作だ。ほかにも中谷美紀やUA、大橋トリオらのプロデュース、世界各国からの依頼を受けて作られたオーケストラ作品など、多彩な活動を展開しているが、作品量が特に多いのは映画音楽だ。

ホウ・シャオシェン監督の『フラワーズ・オブ・シャンハイ』を皮切りに、ジャ・ジャンクー監督『四川のうた』、ユー・リクウァイ監督『プラスティック・シティ』、行定勲監督『真夜中の五分前』など、国内外の多くの作品に関わっている。今年4月に公開されたジャンクー監督の新作『山河ノスタルジア』や、本作と同日に公開される森義隆監督『聖の青春』でも音楽を担当しており、今や世界的にも評価の高い日本人音楽家のひとりと言っていいだろう。

天童荒太の小説をドラマ化した2000年の『永遠の仔』の音楽を共同制作という形で担当した坂本龍一とは、その後も何度かコラボレーションしている。2003年には坂本の監修するhoonという音楽プロジェクトに参加、アルバム『CBL』をリリースしている。これは雑誌「たまごクラブ」「ひよこクラブ」に関連した胎教音楽集で、サティやショパンのクラシック曲を再解釈したもの。あまり知られていないが、電子音楽やクラシック、ポップスの垣根を自由に飛び越える彼の音楽性の幅広さをうかがい知ることができる作品だ。

その坂本龍一は、半野監督の初作品となる本作に「大島渚や吉田喜重、僕の映画のルーツである60年代の日本の独立系監督たちの映画の匂いがする」というコメントを寄せている。(後編へ続く…)

後編「エンタメ性とは無縁。殺伐とした物語と濃厚でリッチな映像〜」に続く

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