【映画を聴く・番外編】12月4日掲載・前編
音楽もいいけど松ケンらの成りきりぶりもスゴイ!
音楽面から映画をチェックするコラム「映画を聴く」。毎週、多彩な映画レビューを掲載していますが、オススメしたい映画が多すぎてお伝えしきれないことも。そんな「取りこぼしてしまった」作品群から、「やっぱりオススメしたい!」という公開中の秀作をピックアップしてみました。
・誰もが楽しく心地よく! あらゆる個性への愛情を感じる“山下タッチ”
『ぼくのおじさん』(11月3日公開)
和田誠の挿絵を満載した北杜夫による児童文学を、山下敦弘監督が映画化。精神科医の兄の家に居候する自称哲学者の“おじさん”と甥っ子の雪男の交感を描いたオフビートなコメディ作で、松田龍平が『舟を編む』の馬締光也役に通じる文系男子ぶりで“おじさん”を好演している。『苦役列車』や『味園ユニバース』など、このところ多彩な作風を見せてきた山下監督だが、本作のテイストは2007年の『天然コケッコー』に近い。ほどよくエレクトロニカ色を感じさせる、きだしゅんすけの風通しのよいスコアが、前半の日本編と後半のハワイ編をナチュラルにつないでいる。
29歳で亡くなった天才棋士、村山聖の最後の4年間を描いた大崎善生によるノンフィクション小説の映画化。20kgの増量で聖役に臨んだ松山ケンイチばかりが話題だが、ライバルである羽生善治役の東出昌大ほか、柄本時生や筒井道隆の役へのなりきりぶりもすごい。音楽を担当するのは、本作と同タイミングで初監督作『雨にゆれる女』が公開された半野喜弘。自身の音楽作品とも地続きな映像世界を展開する『雨にゆれる女』とは違い、本作では秦基博の主題歌に呼応するようなハートウォーミングなスコアを提供。映画音楽家としての幅の広さを感じさせる。
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