戦後日本文学の最高峰とも称される遠藤周作の「沈黙」を、マーティン・スコセッシ監督が映画化した『沈黙‐サイレンス‐』。この映画のトークイベントが12月16日に関西学院大学の関西学院会館・翼の間で行われ、本作でキチジロー役を演じハリウッドデビューを飾った窪塚洋介が、遠藤周作の有識者である細川正義教授(関西学院大学)と山根道公教授(ノートルダム清心女子大学)とともに登壇した。
この日のイベントは、遠藤周作が10代の頃に市の夙川カトリック教会に通い、仁川で浪人生活を送るなど、少なからず、彼が過ごした阪神間の風景が遠藤文学に影響を与えているため、遠藤ゆかりの地・仁川にある関西学院大学を会場に行われた。
演じたキチジロー役について聞かれた窪塚は「キチジローは醜くて、弱くて、ズルくて、負の権化の様に言われるのですけど、踏み絵を踏んでしまう弱さという言い方と、踏み絵を踏むことができる強さという言い方があると思うんですよね。誰も絶対に踏めないという空気の中でそれを踏んでしまうことを考えたら、もはや強いのか弱いのかわからない。原作の中で独白のないキャラクターなので、セリフと誰かからの目線のキチジローというものを拾って役作りをするんですけど、余白がすごく多いんです。自分とキチジローとの余白を何で埋めたら自分はキチジローを生きられ繋げてくれるかと思った時に出てきたのが“イノセント”さというキーワードでした。
「イノセントだから弱い、強い、裏切ってしまう、子どもの頃の善悪の分からないまま成長したという役の捉え方をしました。マーティンが、『28年間やりたいと思って描き続けてきた“沈黙”の自分のイメージしてきたキチジローではなく、本当のキチジローがそこにいた』と言ってくれてとても嬉しかった。監督とは一切キチジローの人となりの話をしていなくて、最初の時点で委ねてくれていたんです。信頼してくれたんだなと思います」と続けた。
途中、山根教授から「どこまでロドリゴとキチジローとの関係を描いているのか? 踏み絵を踏むところは大きなクライマックスですが、その後の本当の関係が深まっていくところはどこまで描かれているのか?」という質問が。これに窪塚は「いわゆるネタバレですね!(笑)」と返し会場を沸かせる場面も。最後に窪塚は参加者に「日本の役者さんたちも力強くて格好良くて泣きました。素直に素晴らしくて、正直辞めてもいいかなという気持ちになってます。ぜひ劇場で見て“沈黙”してください! 嘘です(笑)」という言葉を残して去って行った。
『沈黙‐サイレンス‐』は2017年1月21日より全国公開となる。
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