小林武史とakkoのDNAを引き継いだ17歳、HARUHIの新鮮な魅力!

#サントラ#映画を聴く

『淵に立つ』
(C)2016映画「淵に立つ」製作委員会/COMME DES CINEMAS
『淵に立つ』
(C)2016映画「淵に立つ」製作委員会/COMME DES CINEMAS

…前編「10位〜7位/ジワジワと感動を拡大中〜」より続く…

【映画を聴く/番外編】2016年ベスト10・中編
どこを切り取ってもリッチな雰囲気に酔いしれる

●第6位:淵に立つ
カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の審査員賞を受賞した『淵に立つ』は、足踏みオルガンが印象的に使われる作品。ピアノやアコースティックギターとは違い、どこまでもデッドで余韻を押し殺したオルガンの音色で演奏されるエルメンライヒの「紡ぎ歌」は、浅野忠信の演じる八坂という男の得体の知れなさとリンクしていて、作品の通奏低音のようにも聴こえます。17歳の女性シンガー・ソングライター、HARUHIの歌う主題歌「Lullaby」は、ノラ・ジョーンズを思わせるカラッとしたメロディのアコースティックな小曲で、これも作品のトーンから微妙に距離を置いた感じが逆に新鮮でした。

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●第5位:ブルックリン
アイルランドのシンボル・カラーであるグリーンを印象的に見せる『ブルックリン』は、その色彩感の豊かさだけでなく、そこにぴったりと寄り添うマイケル・ブルックの劇伴も聴きもの。ブルックはもともとギタリスト/プロデューサーとして通好みのアーティストと数多くのコラボを展開してきた人で、映画音楽に本格的に関わるようになったのはここ10年ほどのことですが、本作では室内楽的な小曲を手堅く聴かせます。アイルランド人歌手のイアーラー・オー・リナードが「Casadh An tSúgáin」というケルト語のトラディショナル曲を独唱するシーンが何ともノスタルジックで、個人的には本作一番の見どころでした。

●第4位:キャロル
『ブルックリン』と同じく、50年代のNYを舞台とした『キャロル』は、パトリシア・ハイスミスが別名義で出版した大ベストセラーの映画化。アカデミー賞ではケイト・ブランシェットの主演女優賞ほか、脚色賞/撮影賞/衣装デザイン賞/作曲賞の4部門にノミネートされたというだけあって、どこから切り取ってもリッチかつ緻密に作られ、生まれながらにクラシックの雰囲気が充満しています。時代考証がきめ細かく、物語の舞台である1952年から53年にアメリカでヒットしたポピュラー音楽が数多く使用されているのですが、中でもビリー・ホリデイの歌う「Easy Living」は物語のキー・トラックとしていくつかのシーンで形を変えて出てきます。そういえばケイト・ブランシェットは、同じくトッド・ヘインズ監督の『アイム・ノット・ゼア』で、今年話題になったボブ・ディランを演じたこともありました。

後編「3位〜2位/死に片足を突っ込んだような非現実感〜」に続く…