【映画を聴く・番外編】12月のオススメ映画/前編
ハナン・タウンゼントの優雅な音楽がプロットを見事に補足!
音楽面から映画をチェックするコラム「映画を聴く」。毎週、多彩な映画レビューを掲載していますが、オススメしたい映画が多すぎてお伝えしきれないことも。そんな「取りこぼしてしまった」作品群から、「やっぱりオススメしたい!」という公開中の秀作をピックアップしてみました。
・庵野秀明のゴジラ愛、魅力倍増ののんの声、さすがの京アニ品質…今年のベストはこの映画!
●『皆さま、ごきげんよう』(12月17日公開)
悲劇はいつも喜劇と隣り合わせ。断頭台にかけられる貴族を見て熱狂する主婦たち。戦場で略奪や暴行を繰り返す兵士たち。その兵士たちに洗礼を授ける刺青だらけの従軍司祭。ローラースケートを履いてチームで盗みをする窃盗団や、ローラー車に轢かれてぺしゃんこになるホームレス。冒頭20分ほどはほとんどセリフもなく、オッフェンバック「天国と地獄」などの軽快なクラシック曲をバックに、昔も今も変わらない人間のどうしようもなさをユーモラスに描く。風変わりな人々すべてをセンスよく、愛を込めて笑い飛ばすオタール・イオセリアーニ監督が81歳にして到達した、“重みのある軽やかさ”にいつしか釘付けになる120分だ。
●『幸せなひとりぼっち』(12月17日公開)
2015年のクリスマスに公開され、スウェーデンで記録的大ヒットを記録したという人間ドラマ。原作は、これまた世界中でベストセラーとなったフレドリック・バックマンの同名小説で、日本でも10月に刊行されてジワジワと話題になっている。規律を重んじすぎて老害扱いされる主人公の行動にいちいち可笑しみがあり、その後の展開とのギャップでさらに見る者を魅了する。スウェーデンらしい色彩感に添えられる、点描のようなピアノ曲。近年ではジャズ・シンガーの伝記映画『ストックホルムでワルツを』など、日本でも紹介されることが少しずつ増えてきたスウェーデン映画だが、本作をきっかけに熱心なウォッチャーがさらに増えるに違いない。
ハリウッドのイケメン脚本家が、6人の女性たちとの出会いと別れから本来の自分を取り戻そうとする物語。そう書くとなかなか感情移入するのが難しい代物に思えるが、撮影監督はあの『ゼロ・グラビティ』や『レヴェナント:蘇りし者』を撮ったエマニュエル・ルベツキ。“この広い世界のちっぽけな自分”を象徴的に見せるカメラワークがとにかく強力だ。これにクリスチャン・ベイルの迷えるモノローグとハナン・タウンゼントの控えめながら優雅な音楽が加わり、プロットそのものの食い足らなさを余りあるほど補っている。
(後編「中学生の妄想にアラフォー男子が共感しまくり〜」に続く…)
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