好き過ぎるがゆえ欲も出てしまうがキュンに溢れた至福の映画『劇場版　美しい彼～eternal～』

萩原利久＆八木勇征がW主演、人気ドラマのその後を描く

【週末シネマ】萩原利久＆八木勇征W主演によるドラマシリーズ『美しい彼』のその後を描いた『劇場版　美しい彼～eternal～』（公開中）がスマッシュヒットとなっている。原作は本屋大賞2020受賞作家である凪良ゆう・著、葛西リカコ・イラストによる人気小説で、シーズン1は2021年11月から放送されて海外にも広がりを見せて社会現象を巻き起こした。学校カーストの底辺にいる高校生・平良一成と、頂点に君臨するキング・清居奏とのもどかしい初恋が展開。2023年2月に放送されたシーズン2では大学生の平良と俳優業に勤しむ清居のようすが綴られ、その続きのストーリーが劇場版で描かれる。

・相手のどこに胸キュン？ 萩原利久＆八木勇征『劇場版　美しい彼～eternal～』インタビュー［動画あり］

ネタバレとなるので多くは言えないが、序盤から美しく幻想的な映像のなかにアヒル隊長やフラスコなどファンにはおなじみの象徴的なアイテムが散りばめられ、「ああ、これぞ『美しい彼』！」と一気に世界観に引き込まれて気持ちが昂ぶる。続編でありながら、映画から初見の方にも入っていきやすい親切仕様の導入でもある。

崇めたい平良と、同じ目線に立ちたい清居、もどかしさも醍醐味

相変わらず、寝食をともにする日常生活の中で平良と清居の甘イチャなシーンが見られてニヨニヨしてしまう。それでも平良は信仰に似た気持ちで清居を崇め、対等な恋人になりたい清居はもどかしい気持ちを抱えているところも変わっていない。そんななかで平良は人気カメラマン・野口のアシスタントとして働き、野口の実力の高さを感じて現実をつきつけられる。清居は着々と俳優として歩みを進めていき、平良は余計にネガティブさに拍車がかかっていく。清居はそんな平良がはがゆくて仕方がない。それは清居が平良のことを好きだからこそ。好きな相手だから清居は平良に同じ目線に立って向き合って欲しいのだ。さらに、清居の事務所の先輩女優の安奈の事情が絡んできて、2人の恋人生活はさらに一筋縄でいかないことに。

ネガティブ陰キャな平良をキング清居のほうが追う構図にいつもながらキュンキュンし、イタチごっこのような2人の思いが切なくってクラクラ！ これこそが『美しい彼』の醍醐味と苦しいのに嬉しさもあって感情が渋滞してしまう。

原作も好きだからこそ描いてほしかった部分も

ただ、筆者は『美しい彼』が原作も含めて好きだから、好き過ぎるがゆえに、あ～ここを見たかったなと欲が出てきたところも正直ある。

『美しい彼』はもちろんラブストーリーだが、それだけではない。キャラクターの背景に人間関係の複雑さや社会で生きていくことの厳しさ、人生のしんどさを感じさせ、生きるとは？ 人生とは？ も絡めて、恋愛だけを切り離すわけじゃなく、多面的に描いているところも魅力的な作品だと思う。今回、シーズン2から劇場版にかけて映像化された原作小説の『憎らしい彼 美しい彼2』は、安奈の存在により「仕事」と「恋愛」、そして「芸能人であること」と「ファンの立場」がクローズアップされて展開していく。拗らせているためにまたすれ違い始めた平良と清居に、安奈とアイドルの桐谷、カメラマンの野口、平良とオタク仲間であり安奈のファンの設楽などが加わり、厚みある物語が繰り広げられる。

だが、劇場版のクライマックス、筆者はとくに原作で感動した、清居が自分の人生を賭けようとしている“芸能人”としての気概と漢前っぷりが大好きなので、そこを見たかったと思う。何も原作に忠実なばかりが良いわけじゃない。こと本シリーズは原作に忠実ではないものの、それでいて原作の骨子をぶれずに活写してくれるところが気に入っていた。

だからなおさら、もっと攻められたのではないかと口惜しさを感じてしまう。シーズン1があまりにも良過ぎたから期待してしまったのかもしれない。いや、きっと筆者が『美しい彼』を好き過ぎるからだろう。そうだ、好きな気持ちも過剰なのは良くない。それこそ『憎らしい彼 美しい彼2』で描かれていたテーマだったんじゃないだろうか。

美しい清居と騎士のような平良、並んでいるだけで尊い

劇場版は清居と平良の絵になる美しさとカッコ良さを、ドラマシリーズを凌駕する勢いの映像美で余すこと無く見せつけてくれる。清居は可憐で美しいヒロインで、平良は姫を守る騎士であり、めちゃめちゃカッコいいヒーローだ。アイドル映画のような満足感を120％与えてくれている。

もちろんこの“アイドル映画”は嫌味でもなく、まして下げているつもりでもなく、“アイドル映画”も素晴らしく好きなジャンルである。“ひらきよ”は最早私たちのアイドルだ。“ファン”がどうのこうのと能書き垂れては平良に怒られるかもしれない。その“ひらきよ”が並んで存在しているのを見るだけでもファンにとってはありがたくて尊すぎて昇天しそうになる。みんな大好きなシーズン1の眩しい青春シーンや美しい官能シーンのセルフオマージュもあって、ウルウルとなってしまうはずだ。しかも、スクリーンという大画面で見られるのだから至福極まりない。大スクリーンで“ひらきよ”を浴びてファンのみんなで健康になろうじゃないか！ エターナル！（文：牧島史佳／BLライター）

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『劇場版　美しい彼～eternal～』は全国公開中。

・［動画］【ひらきよ】萩原利久＆八木勇征が互いの魅力を語り合う濃厚トーク／『劇場版美しい彼～eternal～』インタビュー