イエジー・スコリモフスキ監督・脚本による7年ぶりとなる最新作『EO イーオー』より、イエジー・スコリモフスキ監督のインタビューを紹介する。
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濱口竜介監督はスコリモフスキ監督を「その人自身を映画と思える人」と称賛
『バルタザールどこへ行く』に着想を得た本作の主人公は、ロバのEO(イーオー)。サーカス団から連れ出され、ポーランドからイタリアへと予期せぬ放浪の旅に出ることになる。
7年間、監督業を離れていたスコリモフスキ監督は、「何よりも感情に訴える映画を作りたいと思っていました。これまで撮ったどの作品よりも感情に基づいた物語を撮りたかったのです」と本作について語る。
キャリアの中で多くの偉大な俳優と仕事をしてきたスコリモフスキ監督だが、本作の主人公はロバ。その演出方法を「この作品の場合、説得のための唯一の方法は優しさを示すことでした。つまり彼の耳に言葉をささやき友好的に愛撫することです」と説明する。
さらに、「ロバは“演技”が何であるかを知りません。彼らは何かのフリをすることができず、純粋に彼ら自身であり続けます。そして決してナルシシズムを見せません。自分の役柄に想定された意図に従って仕事をし、監督のビジョンに口をはさみません。彼らはとても優れた俳優なのです」と、ロバの演技の素晴らしさを語った。
主演のロバのキャスティングについて、「目の周りに白い斑点のある灰色のロバにしたいと考えていた」と話すスコリモフスキ監督は、ブリーダーからロバの写真を見せてもらい、最も魅了されたロバに会いに行ったという。「彼の名前はタコでした。会った瞬間、彼が私の映画の主役になると確信したのです」と“運命の出会い”を振り返るスコリモフスキ監督。
また、「シニカルで世知辛い私たちの世界では、純粋さは世間知らずの証と受け止められ、弱さであると見なされることもあります。しかし私は今でも、自分の中に残った純粋さを育むよう努めています。また、人間と自然、人間と動物の関係性も考え直す必要があるというメッセージも込められています。動物に対しては毛皮や消費のための産業的な飼育ではなく、愛を以てポジティブな関係を育むが真っ当だと考えていますし、そうなればと願っています」と本作で伝えたいことを語った。
本作について著名人からコメントも寄せられており、濱口竜介監督は「もう彼だけになってしまった。その人自身を映画と思える人は。崇高と俗悪がかつてなく接近する最新作はまた一つ映画の領野を広げ、相変わらず陳腐な問いを与える。映画とは何か。つまりスコリモフスキとは何者か」とスコリモフスキ監督を称賛。
また、作家のいしいしんじは「澄みきったロバの瞳は、この世界の歪みを正確にうつしだす。あまりの、その歪みかたに、見ている僕たちは胸を詰まらせ、自分たちの世界を叩き壊したくなる。ロバはなにもいわない。ただ黙々と食み、澄みきった瞳のまま、黙々と歩み去る」とコメントを寄せている。
『EO イーオー』は5月5日より公開される。
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