【ついついパパ目線】『彼らが本気で編むときは、』前編
自称イクメン、子育てを通じて常識が大きく揺らぐ
アクション、ホラーに社会派ドラマ……。どんな映画でも、ついつい“子育て”に結びつけて見てしまう自称イクメンのアラフォーライターが、話題作をパパ目線で取り上げます!
子どもを産むと考え方や視野が大きく変わると話す母親は多いが、それは父親も同じこと。子育て真っ只中の現在、これまで正しいと思っていた常識や、ものの見方が大きく変わった。当然、映画も今までとは違う視点でみることも多くなった。今週公開を迎える荻上直子監督の最新作『彼らが本気で編むときは、』もそんな映画の一つだ。
・『彼らが本気で編むときは、』をママ目線で紹介した【ついついママ目線】コラムも併せてどうぞ!
生田斗真演じるトランスジェンダーの女性リンコは、幼少期から自身の性に対して疑問を持っていた。性別は男だが、どうしても違和感がある……。そんな少年の疑問に、田中美佐子演じる母フミコは優しく寄り添い“ニセ乳”なるものを作る母性愛。
そんな二人のもとに、トモという小学生の女の子が舞い込んでくる。トモは、ミムラ演じるヒロミの一人娘。ヒロミはマキオの姉という設定なので、マキオにとって姪っ子にあたる。
本作のオープニングは、トモが荒れに荒れた部屋に佇んでいる場面から始まる。そこに帰ってくるヒロミ。一言「死ぬ」とつぶやくとバタンと倒れ深い眠りにつく。短いシーンだが、これだけでトモが母親からネグレクトされていることがわかる。
そしてその描写のすぐあとに、ヒロミはトモを置いて失踪するのだ。この時点で、本作での負の部分を一手に受け持つことが確定した母親。しかも、劇中、この母親はずーっと登場せず、最後の最後で悪びれずに戻ってきて、「自分たちの子どもとして育てよう」と決心したリンコとマキオに対して、「トモ帰るよ」と言い放つ。
完全なるヒール役だ。子を育てた経験のある親からしたら「ふざけるな! 最低だ!」という声があがうだろう。そしてこんな意見は正論であり、まっとうな感情だろう。でも一方で、ヒロミの描かれていない部分にエクスキューズを求める母親もいるのではないか……と思う(自分は父親だが……)。
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