現地時間2月26日に行われた第89回アカデミー賞授賞式で、最初に間違って作品賞と発表された『ラ・ラ・ランド』と、途中で本当の作品賞であることが発表された『ムーンライト』。アカデミー賞の歴史はじまって以来の珍事に巻き込まれたこともあって、なにやら因縁めいたこの両作品だが、主要なアカデミー賞前哨戦を見る限り、『ムーンライト』こそが作品賞を獲るべくして獲った作品であることが浮き彫りになった。
『ラ・ラ・ランド』の公開日が2月24日。一方の『ムーンライト』はアカデミー賞効果もあって、当初予定の4月28日から3月31日に公開日が前倒しになった。とはいえ、公開初日にあわせて効果的にプロモーションを仕掛ける宣伝効果や、一足先に試写会で見た映画ファンの口コミ効果もあって、アカデミー賞発表当時における認知度は『ラ・ラ・ランド』が圧倒。それだけに日本人からすると『ラ・ラ・ランド』に同賞を期待する人も多かっただろう。
だが、アメリカでは違っていたようだ。当初こそ『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督は、まだ誰もその存在を認識していない無名の監督であった。その認識が大きく変わっていったのが、昨年のテルライド映画祭での上映において。批評家たちから圧倒的な支持を得て、瞬く間にその評判が広がっていったのだ。
『ムーンライト』の勢いは続き、年が明け1月に発表となったゴールデン・グローブ賞でも、『ラ・ラ・ランド』がミュージカル・コメディ部門で作品賞に輝いたのに対し、『ムーンライト』もドラマ部門でしっかり作品賞を獲得。さらにアカデミー賞授賞式の前日に発表され、前哨戦の最後を飾るインディペンデント・スピリット賞では、作品賞、監督賞、脚本賞、ロバート・アルトマン賞(アンサンブル賞)、編集賞、撮影賞を受賞するなど、ノミネートされていた全6部門を制している。
最終的にアカデミー賞の前哨戦では、『ムーンライト』が『ラ・ラ・ランド』の16回をしのぐ、18回作品賞に輝いている。この結果を見る限り、冒頭にも記したとおり『ムーンライト』の作品賞は、獲るべくして獲った賞と言えそうだ。
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