ラブコメ、アクション、ホラー……。どんな映画でも、ついつい“子育て”に結びつけて見てしまうママさんライターが、話題作をママ目線で取り上げます!
【ついついママ目線】『3月のライオン』前編
往年の大映ドラマも真っ青の
劇的すぎるハードでヘビーな物語
人ってその人が置かれている環境によってずいぶんと考え方や捉え方が違ってきたりする。ひとつ屋根の下で共に暮らしている子どもとは、あまりかけ離れた考え方ではないはずだとつい思い込んだりしがちだ。でも、よく考えると自分と子どもでは境遇がまったくちがっていることもある。
・息子に「おっぱいが欲しい」と吐露された母の言葉を噛みしめる
羽海野チカ原作の大人気コミックを実写化した話題作『3月のライオン』を見て、自分と子どもは環境が違い、それによって考え方が違うかもしれない、とはたと気づかされることがあった。
原作は少女漫画ではないものの、「ハチミツとクローバー」の羽海野チカの絵柄は繊細で優しいタッチ。加えて、零が偶然出会って疑似家族のように深い関係性を築いていく川本三姉妹の祖父は和菓子屋で、住まいも古民家風になっており、作品全体には女子の好きそうな和のおしゃれ感が漂っている。
ただ、そんなムードでやわらげられているのだが、実は物語の内容は往年の大映ドラマのようにドラマチックでハードで重い。実写化されると、やわらかな雰囲気よりインパクト強い中身が前面に押し出され、まざまざと見せつけられた。染谷将太が特殊メイクでガリガリガリクソン状態となって二階堂晴信役を演じても、目くらましされないくらいに重さを感じる。
主人公の零の境遇からしてドラマチックで、彼は幼い頃に交通事故で家族を亡くし、父の友人である棋士の幸田に引き取られるのだ。内弟子ともなった零は幸か不幸か、将棋でメキメキと才能を発揮。面白くないのは幸田の実子の姉弟、香子と歩である。いたたまれなくなった零は家を出るしかなく、深い孤独を抱えることとなる。
筆者が今回、注目したのは零ではなく義姉・香子のほう。彼女は、扮した有村架純が新境地を開いたと言われるほどのやさぐれキャラ。父親の弟弟子であるプロ棋士の後藤とは不倫関係にあり、ひとり暮らしの零の家に上がり込んではしどけない下着姿で絡んでくる、いけ好かない不良娘というところだ。彼女がここまでやさぐれるにはワケがある。
原因はひとえに父親であるプロ棋士・幸田の所業だ。幸田は穏やかで物腰の柔らかい人物だが、親としては無自覚にひどい毒親なのだ。
『3月のライオン』【前編】は3月18日より、【後編】は4月22日より公開される。
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