(…前編「下着姿で絡んでくる有村架純のやさぐれキャラ〜」より続く)
【ついついママ目線】『3月のライオン』後編
相互理解が難しい長女気質と次女気質
羽海野チカ原作の大人気コミックを実写化した話題作『3月のライオン』で、主人公・零の義姉である香子のやさぐれたキャラクターが気になった。扮した有村架純が新境地を開いたと言われるほど、彼女はやさぐれている。
原因はひとえにプロ棋士である父・幸田の所業だ。幸田に限ったことではないが、棋士は非常にストイックな人種だからして、将棋=正義であり将棋で勝つことにしか価値観を見出していない。そして、そのことで子どもたちには重圧がかかる。
将棋にしか価値がないとする親なのだから、子どもにしてみれば存在を否定されたも同然。しかし、当の幸田は子どもに絶望的な宣告をしたという意識すらないのがまたひどい。おまけに母親は存在感ないほどなんのフォローもなく、精神的な育児放棄状態。まったくもって怒る気にもなれないほど毒親だ。そりゃあ。香子もやさぐれたくもなるって、と同情してしまう。
ただ、香子を見てて思うのは心に受けた傷をあまりにまともに受け止め、見本のようにやさぐれていて、逆に「マジメすぎる!」とつっこみたくなってしまう。父と同じ道のプロ棋士を目指し、その意思を砕かれたら「お父さん、認めてよー!」と叫びが聞こえてきそうなほどやさぐれるなんて。見ていて赤面しそうになる。娘がこんなに真っ向から親にぶつかっていったりするだろうか。自分だったらそもそも親の期待に沿うか疑問だし、ダメ出しされれば斜に構えてシレッと受け流して自分の道は自分で勝手決めるだろうし、自分は実際にそうしてきた。やっぱり女性は……、あ、いや、ちょっと待て。まともにぶつかっている女性がいた! 身近で見てきた! 自分の姉だ。
お父さん大好きでありつつ、それだけに親と衝突することもあり、ときには私のために泣いて親とケンカしていることもあった。次女の私としては、申し訳ないけどありがたいやら面倒くさいやら、適当にスルーしてればいいのに、とよく思ったものだ。
香子も長女。そうだ、長女と次女とでは違うのじゃないだろうか。 自分と同じ思考回路と思い込んでいるが、自分と姉も、自分と子どももまったく別の人格。生活をともにしてきた近い存在だとつい同化して考えてしまいそうになるが、成長してきた環境が違えば考え方もずいぶんと異なるはずだ。自分ならかわして済ませることでも、子どもは重く受け止めてしまい苦しませることになるかもしれない。いまこうしてる間も、子どもが苦しんでいるのに気づけないこともあり得るのだ。
とくに真正面から向き合おうとする生真面目な傾向がある長男長女は気をつけてあげなきゃいけないだろう。自分とは全然タイプの違う香子にハッとさせられ、またひとつ子どもを理解する手助けとなってくれた。(文:村井香南/映画ライター)
『3月のライオン』【前編】は3月18日より、【後編】は4月22日より公開される。
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