音楽面から映画をチェックするコラム「映画を聴く」。毎週、多彩な映画レビューを掲載していますが、オススメしたい映画が多すぎてお伝えしきれないことも。そんな「取りこぼしてしまった」作品群から、「やっぱりオススメしたい!」という公開中の秀作をピックアップしてみました。
【映画を聴く・番外編】3月のオススメ映画/前編
●『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』(3月4日公開)
世界で最も有名なチェリストのひとり、ヨーヨー・マのドキュメンタリー。古代の貿易ルートがつなぐアジア、アフリカ、ヨーロッパから総勢50名以上の演奏家を招いた彼の“シルクロード・アンサンブル”での活動を中心に描いている。現代の“We Are The World”というキャッチコピーが付けられているが、フィールドワークをもとにボーダレスな無国籍音楽を創造しようとするヨーヨー・マの姿は、アルバム『NEO GEO』や『Beauty』を作っていた時期の坂本龍一を思わせるところもある。モーガン・ネヴィル監督は、『バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち』で2014年のアカデミー賞&グラミー賞を受賞した音楽ドキュメンタリーの達人だけに、本作でもていねいな仕事ぶりで音楽ファンのツボを刺激する。
・『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』心ない言葉もポジティブなものに変えるパワーがそこにある!
●『しゃぼん玉』(3月4日公開)
●『わたしは、ダニエル・ブレイク』(3月18日公開)
イギリスの名匠、ケン・ローチ監督が前作『ジミー、野を駆ける伝説』での引退宣言を撤回して作り上げたヒューマン・ドラマ。病気で働くことを止められた59歳のダニエルと、2人の子どもを持つシングルマザーのケイティの交感を描く。「これは何?」とカセットテープを差し出す子どもに「音楽を聴くものだよ」とラジカセで音楽を聴かせてみせるダニエルの表情が記憶に残る。社会的底辺に追いやられた人々の現実と、かすかな希望を迷いのない筆致で描き切った、ローチ監督のキャリア総仕上げ的な感動作だ。
(後編「ベタとマニアックのメリハリが素晴らしい! 選曲センスが絶妙で大ヒットも納得の『SING』」に続く…)
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